Open Innovation Platform
FOLLOW US

ピッチイベントで総額最大100万米ドル相当のトークン授与 生成AI時代の「Series T」とは

審査の結果 第一位はInfiniMind,Inc.

審査の結果 第一位はInfiniMind,Inc.

 デジタルガレージが運営するシードアクセラレーター「Open Network Lab」は7月1日、OpenAI社との連携のもと、AIネイティブなスタートアップや開発者を対象としたピッチイベント「Series T – Post AGI from Kyoto」を京都市京セラ美術館において開催した。本イベントは、日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2026 KYOTO」のサブイベントとして実施された。

 近年、生成AIの進化によりプロダクトの開発難易度が下がり、ごく最小人数のチーム、あるいはたった一人で事業を成立させる新たな起業スタイルが増加している。こうした背景から本イベントは、「AGI(汎用人工知能)が現実となる世界で、スタートアップは何を創るべきか」を問い、次世代のAIビジネスを牽引するファウンダーを発掘・支援することを目的に企画・実施された。

 イベントの最大の特徴は、AI時代の創業や事業開発に不可欠な「Token(開発クレジット)」を調達するというコンセプトにある。

 従来、こうしたピッチコンテストでは有望なチームに対しては、創業に必要な資金を提供してきた。しかし、最近では起業にあたってプロダクト開発や仮説検証を加速させるため、最新のAIモデルを「どれだけ好きに使い倒せるか」がスタートアップの成長速度を左右するようになってきた。

 こうした環境の変化を背景に、OpenAI社などの協力を得て本格的な資金調達ラウンドに先立ち必要なリソース(Token)を提供する仕組みとなっているのが今回の「Series T」だ。

 当日は書類選考を通過したファイナリストたちが登壇し、国内外の著名投資家やOpenAI社の関係者などから構成される審査員陣に向けて、独自の技術や事業構想をアピールする熱いピッチが繰り広げられた。総額最大100万米ドル相当のOpenAI APIクレジットをはじめとする豪華な特典の効果は大きく、応募は期間が短かったにもかかわらず280社・チームを超えた。当日のピッチには、その中から選抜された15社が登壇した。

 選抜された15の事業は、どれも省力化、自動化、拡張性などの点で興味深いもので、かつ生成AIの登場とその驚異的な進化があったがゆえに実現できたビジネスだ。そういう意味では、どのチームも「もっと最新のリソースを大量に使いたい。使えば使うほど、早く、深く、大きく事業展開ができる」と考えており、それが今回のチャレンジの動機となっていることは間違いない。

激戦となった本コンテスト、審査の結果の上位3チームとその事業内容は下記の通り。

1位:InfiniMind,Inc.

 あらゆる動画データを解析し、特定シーンの抽出やルール違反検知などを汎用的に実現するビデオインテリジェンスプラットフォームを開発。テレビ放映など人がすべてをチェックするには膨大な時間がかかるが、AIに肩代わりさせればその負荷は大幅に軽減される。ただし、この目的でAIなど必要なリソースを稼働させると莫大なトークンが必要になる。今回の受賞はそういった意味でも嬉しいものになったことだろう。

2位:株式会社AntAI

 AIの「ハルシネーション(幻覚)」を防ぐためには意思決定に至った文脈の理解が必要。チームの意思決定から永続的な因果関係のナレッジグラフを構築する記憶インフラAI「Mira」を開発。AIエージェントと人間とが協働する場面では必要となるツールゆえに、このイベントのテーマでもある「ポストAGI」でも活用が期待される。

3位:OselAI株式会社

 卒業したアイドルや完結したアニメキャラが暮らす「IF世界」に没入し、対話を楽しめるAIコンパニオン特化型プラットフォーム。日本が得意とするエンタメ市場がより拡大できる可能性を感じさせた。

 ちなみに、会場参加者に最も支持されたチームを表彰する「オーディエンス賞」、今回の選出方法は投票ではなく、ピッチ後の会場の拍手の音の大きさで決まった。

 その結果、最も大きな拍手を集めたのは、沖縄から駆けつけ、かりゆしウェアで登壇した沖縄工業高等専門学校のチームだ。提案したのは沖縄高専発のプロジェクトとして、大規模災害時にも通信を可能にするスマートフォン接続型LPWAモジュール「アドフォン」。ポストAGIの時代にも通信インフラは当然重要なものであり続ける。今回の提案はそのインフラを災害時にも機能させるツールやデータ軽量化の技術だ。AGIの中核技術や典型的な社会実装ではないが、こうした社会基盤も同時に必要になることを考えると、それにふさわしい受賞だったのではないだろうか。

Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。