NTTデータと群馬大学などは9月、東京・江東区の豊洲地区で地域住民を対象に、公道での複数の自動運転車による「オンデマンド移動サービス」の実証実験を行っている。2020年までに、特定の場所でシステムがすべてを操作する自動運転バスや自動運転モビリティ(車両)の実用化を目指す。実験に先立ち、報道機関向けの乗車体験会があった。その実力は?
車両がNTTデータ本社のある豊洲センタービルの車寄せから出発。警備員の誘導に従って公道に出ると、ドライバーがハンドルから手を離した。片側一車線の道路を、ややゆっくりと感じる速度で直進していく。
交差点ではしっかり右折レーンに入り、赤信号で停止。青に変わると、対向車と横断歩道を渡る歩行者がいなくなったのを確認したかのよう動き出し、目的地であるアーバンドックららぽーと豊洲まで到着した。
今回の実験は米国SAE(Society of Automotive Engineers)による定義でレベル2、部分的な自動運転だ。2020年には限定条件において、全てシステムが操作し、ドライバーは全く関与しないより高度な自動運転、レベル4を目指す。
自動運転の数百メートル、数分間は途中、一度だけブレーキが“雑”と感じた以外、特に危険や不安を感じることはなかった。安全に配慮しているだけ、むしろゆっくりしすぎと感じるかもしれない。車内にはコミュニケーションロボット「ソータ」が設置されていて、運行状況を案内していた。
今回の実験に参加するのは近隣の住民約50世帯(※)。スマートフォンのアプリで依頼すると配車される。マンションと豊洲駅、ららぽーとの3カ所で乗り降りできる。
※住民対象の実証実験は14、19、20の各日に実施
NTTデータはこの「オンデマンド移動サービス」の新規性として
の3点を挙げている。
実験はNTTデータのほか、群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センターと大和自動車交通の共同実施で、市販車を改造した車両3台を使用する。
「オンデマンド移動サービス」を支えるのは、車両である自動運転モビリティと運行管制システムだ。車両には360度カメラ、障害物を感知するレーザーセンサー、衛星利用測位システム(GPS)が搭載され自己位置を推定。制限速度や信号など各種規制が入力された地図情報と照合しながら自動走行する。位置情報の誤差は2センチ程度という。
また、管制システムは配車依頼の受付から本人認証、配車・走行ルートの指示を行う。周辺環境を直感的に把握する3D地図の表示や、ドライバー視点による管制・遠隔監視、操作が可能。また、物理的なモニターなどが不要で、200インチモニター相当の情報を表示できるVRによる管制・遠隔監視も可能だ。これらは4G通信網で運用できる。
GPSの精度が落ちるため雨や雪には弱く、天候も考慮しつつ運行を管制する必要があるという。
一般にイメージされるAI(人工知能)による自動運転というより、無人電車の自動運行に近いシステム。群馬大学の同センターの小木津武樹・副センター長は「機械による計算量が小さくしている」という。
交通事故の削減や交通弱者の移動手段確保、渋滞解消などを目標に、サービスでは地方での自動運転バス、都市部や住宅地での近距離オンデマンド運行を想定している。
小木津・副センター長は「技術的なブラッシュアップとともに、街に必要とされ受け入れられるためのコンセンサスが必要。実験を通して、自動運転車を考えてくれる人が増えることを期待する」という。
また、NTTデータの町田宜久・第一公共事業部営業統括部市場創造推進室課長は、事業化に向けて「都市と地方で交通事情は異なる。2020年までに実験を行い、ニーズを見極めたい。パートナーと連携した事業化が大事だと考えている」と話している。