Open Innovation Platform
FOLLOW US

廃線跡を走るBRTで自動走行バスならでの課題を検証〜ひたちBRTで実証実験〜

今回の実証実験に用いられたひたちBRTの車両

今回の実証実験に用いられたひたちBRTの車両

 わが国における大きな社会課題のひとつが「地方鉄道の衰退」である。それにより高齢者や通学の足が奪われてしまう。鉄道路線を廃止してバス輸送に切り替えたとしても、運転手不足、事業採算性の悪化などの要因により、バス路線の継続もおぼつかない地域が増えている。

実証評価に使用されるバス(先進モビリティ)

実証評価に使用されるバス(先進モビリティ)

 茨城県日立市では2005年廃線となった日立電鉄の線路跡をバス専用道として利用する「ひたちBRT(Bus Rapid Transit : バス高速輸送システム)」が2013年より稼働している。専用道を走るBRTは歩行者や他のクルマに走行を妨げられることがないので、自動走行の実証評価に好適だ。

 日立市と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)は、自動走行などを活用した端末交通システム(※)の社会実装に向けた実証を国から受託しており、ひたちBRTをその実証実験の場として選んだ。

 この実証評価では、産総研が中心となり、SBドライブ株式会社、先進モビリティ株式会社、みちのりホールディングス、日立電鉄交通サービス、ジョルダン、コイト電工、トッパンなどがチームを形成している。

※目的地と自宅の間など短・中距離の移動を補完する次世代型交通システム

* * *

 2018年10月19日、日立市の「ラストマイル自動走行の実証評価」の出発式には日立市長はじめ、地元の政財界から多くの来賓が詰めかけた。地域交通の運営が課題である日立市にとって、大きな期待を寄せられている実証評価であることがわかる。

 この、バス自動運転の実証評価「ラストマイル自動走行の実証評価(日立市)」では、小型バス(日野ポンチョ改造型)が、「日立市おさかなセンター」と「大甕(おおみか)駅」の間(約3.2km)を希望した市民を乗せて走行する。

 乗用車と異なりバスでは停留所ごとに乗客が乗り込み、車内を移動し、立ったり座ったりする(実証時は着座)。乗降の時、車内の移動、急停車の時など、多くの事故が発生するリスクが高まるポイントがある。今回BRTを使った実証実験では安全面、技術面での検証はもちろん、一般乗客も受け入れることで社会の受容性、事業としての継続性なども検証される。

自動運転レベル3で快走

自動運転レベル3で快走

 実際にバスに乗車してみた。このバスはGPSと磁気マーカーにより自動走行ルートを維持する。自動運転レベル4(特定の地域で運転手不要)の機能を有するが、本実証評価では運転手が着座し、システムからの指示にすぐ対応できるレベル3である。

 乗客はスマートフォンアプリでスマートバス停のQRコードを読み取り、仮想チケットを購入して乗る。車内は、カメラでモニターされ、AI(人口知能)が、乗客の挙動を常に分析する。

 バスが発車する。出発地(おさかなセンター)からBRTまでの一般道は運転手が運転するのかと考えていたが、そうではなく、一般道もレベル3の自動走行で走り続けた。途中、大きなカーブがあったが無難にハンドルを切り、戻していた。また、信号を検知し停車と発車を繰り返した。運転手は終始手放しのまま、何も問題は感じられない。

 BRTの軌道に入ると、さらに自動走行はスムーズになった気がする。途中、歩道と交差する部分(バーが下りている)には、人の侵入を検知するため、電灯に歩行者検知システムが取り付けられている。さらにバス停で停止する場合も、乗客が乗り降りしやすいような位置に停車する必要があるがこれも難なくこなし、定刻で大甕駅に到着した。

遠隔運行管理システムディスパッチャー(SBドライブ)

遠隔運行管理システムディスパッチャー(SBドライブ)

 遠隔運行システム(SBドライブ社「ディスパッチャー」)を見せてもらう。車両の走行については、オペレーターが画面で管理し、車内で何かあったときにはアラートが出る。実際その画面を見せてもらったが、乗客が大きく頭を動かしたり、移動したりしたときにアラートが出る場面もあった。もちろんトラブルではなく、そのたびオペレーターがリセットしたが、こういうことは実証評価の中でチューニングされていくのだろう。想定外のトラブル発生時は、バスを遠隔操作で停めることもできる。つまり、オペレーターがいれば運転手は必要ない。オペレーター数人でバスを運行管理できれば、運転手不足、コスト削減が可能になる。

「ワンマンバスになって路線バスから車掌さんがいなくなり、今度は運転手さんもいなくなるのですか?」と関係者に話したら、乗客とのコミュニケーションのために、逆に車掌が復活するかもしれないという声もあると言う。乗客にはコミュニケーションが必要だ。バス内で販促活動などもできる。

バーチャルバスガイドがおもてなし

バーチャルバスガイドがおもてなし

 今回は、乗客とのコミュニケーション担当として、遠隔運行システムと連動したバーチャルバスガイド(SpiralMind「アバターテレポーテーション」)が車内アナウンスを受け持った。これは遠隔管理している「中の人」の口の動きなどを検出し、バーチャルキャラクターに反映させるものだ。

 乗客からの運賃徴収も課題のひとつだ。今回は事前決済を想定し、アプリを使い、QRコードを読み込んで乗車した。しかし、そもそも対象となる乗客層の年齢は高めで、スマートフォンでの決済は難しいかもしれない。

 現在、各地でさまざまなタイプの自動走行の実証実験が行われており、それ自体はそんなに珍しい風景ではなくなった。しかし、社会課題を解決に向けて、地域住民が実際に乗車した自動走行バスが走る様子を見るのは感慨深い。日立電鉄の廃線に落胆した人たちも、その廃線跡を快走する自動走行バスを見れば、何か感じるものがあるかもしれない。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。