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AIを五輪でも活用、開催費用の削減も アリババが平昌五輪で宣言

アリババグループのショーケースを訪問したジャック・マー氏とバッハIOC会長。アリババグループ提供

アリババグループのショーケースを訪問したジャック・マー氏(中央)とバッハIOC会長(左)。アリババグループ提供

平昌五輪の江陵オリンピックパーク。アリババグループのショーケース。筆者撮影

平昌五輪の江陵オリンピックパーク。アリババグループのショーケース。筆者撮影

「アリババクラウドは未来の五輪のためにAI(人工知能)『ETスポーツブレイン』を提供いたします」

 2018年2月10日、韓国江原道江陵市のオリンピックパーク内にある、アリババグループのショーケースでローンチイベントが開催された。上記の言葉は董本洪(クリス・トン)CMOのものだ。

 2017年1月、中国IT大手アリババグループは国際オリンピック委員会(IOC)と契約を交わし、最上位の五輪スポンサーであるワールドワイドパートナーとなった。クラウドコンピューティングによる運営の効率化、ECプラットフォームの構築でのパートナー、およびオリンピックチャンネルのサポートで五輪に貢献していくと発表されている。

 10日に開催されたローンチイベントでは、アリババグループのクラウドコンピューティング部門であるアリババクラウドに関する発表が中心だったが、最大の目玉は五輪でのAIの活用だ。

活用範囲が広がるアリババのAI

 五輪とAIがどのように関連するのか? にわかにはイメージできない話だが、アリババはAI活用で地道な実績を積んできた。

 2015年にはAIプラットフォーム「PAI」を発表。旗下のECサイト「タオバオ」の検索結果の最適化、モバイル決済「アリペイ」で詐欺やダフ屋など不適切な取引を検出するシステムにも応用された。

 2016年には音声・画像・顔・自然言語認識能力を統合した人工知能「ET」を発表。製品設計などの工業分野、健康診断などの医療分野、そして交通改善などの都市管理の分野で実用化された。

 工業分野では太陽電池パネルを製造する蘇州協鑫光伏科技有限公司と提携し、王城内の湿度、温度、原料や製造機器の温度など1000項目にわたる数値を測定し、最適の品質を確保する手法をAIが提案するシステムを作り上げた。

 医療分野では武漢蘭丁医学高科技有限公司と連携し、毎月108万ものがん検診を処理するシステム、血糖値などのデータを元に生活改善アドバイスを送るU糖社(糖尿病患者向けに自宅で血糖値を測定できる機器提供)のシステムがリリースされている。

アリババグループのショーケースで講演する董本洪(クリス・トン)CMO。筆者撮影

アリババグループのショーケース。展示された製品を試用するジャック・マー氏。筆者撮

 都市管理の分野ではアリババグループのお膝元である浙江省杭州市が先駆的に導入している。市内5万カ所の監視カメラから得た映像を画像認識技術によってデータ化。渋滞情報などを把握し、信号を制御することによって渋滞の解消を図った。昨年12月の発表によると、杭州市試験区域では通行に要する時間が15.3%減少したという。このシステムは広州市、蘇州市、貴州市、マカオ市、そしてマレーシア・クアラルンプール市と続々と導入が決まっている。

 そして昨年12月には全面的な産業AIに進化した「ETブレイン」を発表した。このAIが最初に利用されるのは北京市の首都国際空港だ。毎日1700便が離着陸する巨大空港において、どの便にどの駐機場を割り当てるかをAIが判断する。各機体の大きさ、飛行状況、乗客の乗り換え効率などから最適の判断を下すという。従来は専門の担当者が毎日2~3時間をかけて決定していた作業がわずか50秒で終了する。

 また割り当ての効率化によって、ボーディングブリッジのある駐機場の利用率が10%向上すると予測されている。ゲートから航空機までバスで移動する人が減り、移動の効率化が図られる。さらにETブレインは50秒の計算で割り当てを決定できるため、悪天候などのトラブルで遅延が相次いだ時には速やかに再設定を行うことができる。

AIで五輪予算の削減が可能?

 これらの実用例を見てわかるように、AIの効用は大量のデータを処理し、最適の判断を下すことにある。ローンチイベントの記者会見で、董CMOは「五輪の予算削減に効果があるとはどのような意味か?」との質問に、AIは最適の判断を下すことで無駄を省くことができると回答している。

アリババグループのショーケースで講演する董本洪(クリス・トン)CMO。筆者撮影

アリババグループのショーケースで講演する董本洪(クリス・トン)CMO。筆者撮影

 具体的にどのようにAIを五輪に活用するかは今後の課題だというが、混雑回避や画像認識によるセキュリティ強化、さらにはオリンピック開催地をAIで空間分析し、最適な会場配置など都市インフラの提案にまでかかわると意欲を見せていた。壮大な構想は果たしてどこまで実現するのだろうか。

 アリババグループにとって、この平昌五輪がパートナーとして最初の五輪となり、今回はショールームでの技術展示のみにとどまった。2年後に迫り、すでに準備が進んでいる東京五輪でも具体的な活用は難しいとのことだが、もし導入されていたならば東京五輪の多大な予算超過にETブレインはどのような判断を示していたのだろうか。

アリババ都市AIの説明動画(中国語) https://youtu.be/6voLL9ioTTo

高口康太 Written by
ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。二度の中国留学を経て、中国専門のジャーナリストに。『ニューズウィーク日本版』『週刊東洋経済』など各誌に多数の記事を寄稿している。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。