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自身のDNAデータと株を交換  米国 スタートアップLunaDNAを試してみた

LunaDNAを試してみた (イメージ図)

LunaDNAを試してみた (イメージ図)

23andMeのキット

23andMeのキット

 米国では今、遺伝子検査サービスが爆発的に流行している。23 and MeやAncestry DNAなどが主要なプレイヤーで、利用する際にはインターネットで遺伝子検査キットを購入し、唾液を専用の容器に入れ送り返すだけで、自分の遺伝子検査結果がわかるというもの。 この検査結果のデータは、ある意味究極の個人情報だが、この検査結果データをスタートアップの株式と交換するというサービスが登場した。米国のスタートアップLunaDNAが2018年12月に開始したサービスだ。このサービスを早速試してみたので、ここで報告したい。

そもそも遺伝子検査サービスとは

23andMeのキットの唾液を入れる容器

23andMeのキットの唾液を入れる容器

 本題に入る前に、簡単に遺伝子検査サービスに関して紹介したい。ヒトの細胞内にはDNA(デオキシリボ核酸)という物質があり、その情報に基づいて体の細胞や器官、臓器が作られていく。ヒトが持つDNAはほぼ共通しており、個人間では約0.1%の違いがあるのみとも言われている。その違いごとの特徴(例えば、お酒に強いとか、乳がんになりやすいとか)を解明することで、検査を受けた人に病気のかかりやすさや体質などの遺伝的傾向を知らせることができる。また、DNA解析をすることで自分の祖先の特徴とルーツも知ることができ、人種のるつぼであるアメリカではこの目的でサービス利用する人が多い。米国ではすでに2,000万人以上が検査を受けていると言われているから驚きだ。

 日本にも遺伝子検査サービスを提供している会社はあり、DeNAライフサイエンスが運営するMYCODEや、現在はユーグレナの傘下となったジーンクエストのGenequestなどがある。日本でのユーザー数は公表されていないので正確な数値は不明だが、これまで約100万人程度が利用しているのではないかと思われる。

 日本と米国のサービスの最も大きな違いは、米国では遺伝子解析データ(DNA配列の生データ)をユーザーがダウンロードできるのに対し、日本での検査サービスは、疾患リスクや体質情報をウェブサイト内のマイページで閲覧できるのみで、解析データを手元においておくことはできない。消費者は遺伝子検査を受けるためにお金を払っている($100〜$200程度)ため、解析データも手に入れられるべきだと筆者は考えるが、日本ではそうはなっていない

遺伝子解析データはだれのもの

23andMeでデータのダウンロードを行うページ (上)ダウンロードした筆者のDNA配列の一部(下)

23andMeでデータのダウンロードを行うページ (上)ダウンロードした筆者のDNA配列の一部(下)

 今年7月に大手製薬会社のグラクソ・スミスクライン(GSK)と23 and MeがDNAデータの創薬活用に関して提携した

 500万人のデータを保有する23 and MeにGSKが3億ドル(約340億円)出資し、パーキンソン病の原因遺伝子であるLRRK2を活用した新薬開発を共同で行う。23 and MeはGSKのみならず他にも10以上の製薬会社と提携している。

 同社の保有する解析データは、 提供者自身が費用負担して解析したものだ。仕組み上、あらかじめ第三者へのデータ共有を拒否することもできるものの、自身の遺伝子解析データを元手に企業が収益を上げていることに釈然としない利用者も多い。LunaDNAの取り組みはこの問題を解決しようとしている。

 米国カリフォルニア州サンディエゴ郊外に本社を構えるLunaDNAは2017年に設立されたスタートアップだ。23 and Meなど他社の遺伝子検査サービスの解析データを同社にアップロードすることで、データの種類に応じて個人に報酬を渡すサービスを行う。この構想自体は目新しいものではないが、SEC(米国の証券取引委員会)の承認を得て、報酬を同社の株式で渡すスキームを実行している会社は現時点で同社だけである。自身のデータを登録することで株式を得ることにより、同社が集めたデータが活用された結果うまれた利潤はデータの提供者にも継続的に還元することができる。

LunaDNAを試してみた

 筆者は23 and Meを利用して、あらかじめ検査を行った上でLunaDNAのサイトにアクセスした。米国居住者であるという制限はあるが、あらかじめ遺伝子検査サービスを利用し、解析が完了していれば、データの提供から株式の譲渡までわずか15分で、それも手続きの全てがオンライン上で完結する(ページ下参照)。譲渡される株数は提供するデータ種類によってさまざまで、どんなデータを提供すれば何株得られるのかは、サイト上に明記されている。全ゲノムデータを提供すると300株を得ることができる。今回筆者が提供した23andMeからダウンロードしたデータは「Genotyping by DNA Genome-wide Microarray or Sequencing」に分類され、50株(評価額$3.5)と正直微々たるものだが、自身で納得した上でデータを提供することができた。 

 このサービスは、データの提供者に報酬を提供すると同時に、遺伝子情報が、特定企業やサービスに囲い込まれることがないように、こうしたプラットフォームを提供しているという。まだ開始して間もないサービスでデータを提供したユーザーもまだ少ないと思うが、個人保有のDNAデータの新たな管理、活用法を示してくれた。今後のさらなる成長に期待したい。

🔳登録までの手順(手続き途中の画面は一部省略しています。画像クリックすると拡大表示します。)

Website TOPページから「Join」をクリック

Website TOPページから「Join」をクリック

アメリカ居住者であることの同意。(株式を付与するため証券取引法による制約だと思われる。)

アメリカ居住者であることの同意。(株式を付与するため証券取引法による制約だと思われる。)

アップロードする解析データのサービサーを選択

アップロードする解析データのサービサーを選択

23andMeからダウンロードしたデータをLunaDNAにアップロード(10秒くらいで完了)

23andMeからダウンロードしたデータをLunaDNAにアップロード(10秒くらいで完了)

10分程でデータ確認終了のメールを受信

10分程でデータ確認終了のメールを受信

マイページのステータスが「Reserved」に変わり、50株の権利を取得

マイページのステータスが「Reserved」に変わり、50株の権利を取得

 

宇佐美克明 Written by
DG LabでBioHealth分野を担当。東京工業大学 生命理工学部卒。学生時代は、生態系に与える影響を最小限にし、かつ経済効率性を向上させるグリーンケミストリーの研究を行う。卒業後はインターネット広告業界で経験を積み、インドネシアでインターネット広告代理店を立ち上げ。2016年に東京に戻りBioHealth分野にてテクノロジー×ビジネスの取り組みに従事。2018年5月よりボストンに移りMIT Media Labにて医療情報管理システムの研究及びスタートアップ企業への投資も手がける。