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AIの時代にフェイスブックのデザイナーが求められていること

qTHE NEW CONTEXT CONFERENCE 2018 SAN FRANCISCO

THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2018 SAN FRANCISCO

 テクノロジー業界でここ数年、その存在感が急速に大きくなった人工知能(AI)とデザイン。この2つを関連づけて論じられることはあまりなかったが、2018年11月にサンフランシスコで開催された「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2018 SAN FRANCISCO」ではまさにその2つがテーマだった。中でも午前中に登壇したフェイスブック社のプロダクト担当の副社長マーガレット・スチュワート氏(Margaret Stewart VP of Product Design, Facebook)の講演は、デザインとAIの融合がすでに欠かせなくなっていること実感させるものだった。

 この日披露した話題のひとつは、視覚的な障害がある人にむけた新たなインターフェイスのアイデアだ。テキストについては読み上げのサービスがすでに存在している。しかし最近はビジュアルコンテンツの占める割合が増えてきており、従来の読み上げだけでは、そこに何が描かれているのかは理解きても、その画像の内容がどういった様子を描き出したものかを理解することは難しかった。そこで、フェイスブックのAIデザインチームは、画像をタッチすることで新しい体験を生み出す「シースルータッチ」という機能を開発した。

ナイフ、フィーク、ケーキが並んで写った画面。指がケーキに触れると「ケーキ」と発声する

ナイフ、フィーク、ケーキが並んで写った画面。指がケーキに触れると「ケーキ」と発声する(講演のスライドより)

 例として示されたのは、ケーキとナイフ、フォークがテーブルの上にある写真。写真に写っているものがなんであるかは、画像解析のAIが認識をする。この写真を端から順に指でなぞっていき、指がケーキの上に来ると「ケーキ」。テーブルの上だと「テーブル」と何に触れているのかを音声で教えてくれる。これにより、ケーキとナイフ、フォークがどのような順番で並んでいるのかを知ることができる。また、4人の人が並んだ写真であれば、指でなぞって一人ずつ確認していけば、誰と誰が隣り合わせで、4人がどのように並んでいるのかがわかる。さらに最近ネット上で話題になることが多い「インターネット・ミーム」と呼ばれる画像ネタなども、この機能を利用すれば、誰がどんな発言をしており、どこがどう面白いのかを理解することができる。

 フェイスブックにおいての課題は、このように良かれと思って開発した機能であっても、世界のいろいろな場所、いろいろな状況下で使われていくうちに、予期しない負の面が現れてしまうことだという。「良いように使ってくれる人もいれば 結果的に意図しなかった悪い方向性に使われてしまうこともあります」という言葉は、全世界で20億人以上のユーザーを抱えるフェイスブックのデザイン責任者としての苦悩を感じさせた。

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 同氏いわく、デザイナーは通常、自分の手の届く狭い世界で仕事をしている。その世界でより良いサービスを作り上げていくことは、デザイナー自身にとっても心地が良い。しかしフェイスブックでは社会的な影響を考えながらデザインすることが求められる。世界中で利用されるなら、世界各地の政治、経済、文化などがどうなっているのかを知る必要がある。従来こうした考察や配慮はデザイナーの不得意とすることだったが、現在は欠かすことができない素養だと考えられている。

 また、上記のように、フェイスブックにおいても、あらゆるプロダクトの背景にはAIが関係しており、AIの影響は広範に及ぶ。よってそのAIに人種や性差別などの偏向がないかをチェックすることは重要になる。同社ではフェアネスフローツールという診断ツールで、利用している学習モデルにバイアスがかかっていないかを常にチェックしているという。

 ユーザーインターフェイスをデザインするデザイナーにとっては、AIのバイアスのチェックなんて「これバックエンド機能でしょ。私の仕事に何の関係があるの」と思いがちだが、こうした認識ではこの先は通用しないといのが同氏の指摘だ。エキスパートになる必要はないが、デザイナーもAIについてその特性や課題を一通り理解する必要がある。

 デザインはテクノロジーと一体となって社会に浸透していく。バイアスのかかったデータから生まれたAIがどのような影響を社会に与えてしまうのか。デザイナーは常にそこに考えが及ばなければならない。講演の中での「われわれデザイナーは『技術』と『人類』のちょうど真ん中にいる」という発言は、人類史上最も多くの人がそこにつながっているフェイスブックのデザインを統括する立場である同氏の実感なのだろう。

北元均 Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。