さて、読者の中に暗号通貨ビットコインを持っているという人はどのくらいいるだろう。もの珍しさで興味本位に手に入れた人、投資目的で盛んに売買したことのある人、あるいはマイニングをして手に入れたという人もいるかも知れない。そんなあなたの大切なビットコイン。今どこにあるのかご存知ですか?
スマホアプリの上での数値として、その存在を把握してはいるものの、「手元で管理しているよ」という人はほとんどいないはず。「そもそも手元で管理できるものなの?」ということすら世間一般では定かではないビットコインだが、条件さえ整えば自分の手元でビットコインを保管することは可能なのだ。というよりビットコインはもともと”自分で”管理するために作られたものであり、いわば高度なテクノロジーを駆使したタンス預金なのだ。
デジタルガレージのDG Labブロックチェーンチームが開発したハードウェア「hack0」はいわば“ビットコインの貯金箱”だ。貯金箱とはいうものの、見た目がブタや郵便ポストの形をしているわけではなく、四角い筐体にLAN接続のためのポートが付いた黒い箱だ。ここに自分のビットコインを保存できるという。しかもP2Pによるサーバを経由しない通信でビットコインでの支払いや送金、着金を行うことも可能だ。この小さなhack0(箱)で自分のECサイトを立ち上げる事もできる。
専門的な解説をすると、Bitcoin/LightningフルノードにBTCPay Serverを搭載したプラグ・アンド・プレイデバイスで、スイスのShift Cryptosecurity社が開発したハードウェア「BitBoxBase」に採用されている高度なセキュリティレベルを誇るハードウェアをベースに開発されている。(ゆえに今回のCEATEC2019の会場ではスイステックパビリオン内の展示ブースを利用している)
今回展示されている「hack0」はプロトタイプ版であり、製品化する際にはここにディスプレイが加わる。使い方は簡単でネット接続後、ディスプレイの操作指示に従い、表示されたQRコードを読み取ることなどでビットコインの出し入れをすることができるようになる予定だ。店頭におけばビットコインでの支払いにも対応できる。
そもそも、本来分散型の管理システムであるビットコインは、手持ちの資産の管理も分散型であることが望ましい。手元で管理すれば、取引所にまとめて管理された各人の資産が盗み出されてしまうようなことも防止できる。また、現在はお弁当箱ほどの大きさがあるが、これを基盤に搭載できるチップ程度の大きさにまで小さくすると、車や家電などで価値を分散して保有できるようになり、M2M (Machine to Machine)ペイメントと呼ばれるハードウェア同士の自動支払いや価値交換も可能になる。こうなるとビットコインでの支払いや価値の交換が端末(エッジ)側で処理できるようになるため、ビットコインの利用シーンが一気に広がることになるだろう。
DG Labのhack0開発者たちはビットコインが近い将来決済手段や個人間、更にマシン間の価値交換取引に使われることを見据えている。