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マスクだけでなく人工呼吸器も3Dプリンターで

3Dプリント人工呼吸器モデル公開実験の様子(YouTube「?VENT」のライブ中継から静止画引用)

3Dプリント人工呼吸器モデル公開実験の様子(YouTube「?VENT」のライブ中継から静止画引用)

 国立病院機構新潟病院の石北直之内科医長と広島大トランスレーショナルリサーチセンターの木阪智彦准教授が3月27日発表した、3Dプリンターで製作した人工呼吸器の実用化を目指したプロジェクト「COVIDVENTILATOR」が進捗を重ねている。

 石北氏が開発したこの人工呼吸器は、医療機器の製造設備が限定される場においてもインターネット接続環境と3Dプリンターがあれば、その場で製造できる。実際に2017年1月には国際宇宙スターションにデータを転送し、部品を出力する実験を行っている。また無重力下でも動作可能で、電源なしでも作動させることができるため、全世界的な蔓延想定される新型コロナウイルスの治療においても地域を選ばず活用できる。

 今回発足したプロジェクトは、日本および世界各国での医療機器認証を受けるためのさまざまな準備費用を寄付により集めることが目的だ。4月8日付けの進捗状況報告(「発明者の石北直之から感謝と進捗報告」)によれば、当面の目標を「PMDA(医薬品医療機器総合機構)による審査と厚生労働大臣による承認を得ること」としており、さらに「本機器を国際的に通用する医療機器として確立すること」を目指す。そのためプロジェクトチームが現在PMDA審査の準備を開始しているとのことだ。

 なお、この人工呼吸器の部品サンプルを3Dプリンターで製造するためのテストデータが提供されており、これを実際に作るボランティアが求められていた(現在は一旦中断)が、これは実際に利用される機器の部品を作るということではない。医療機器である人工呼吸器は医療機器製造販売の承認を得る必要があるため、その製造には誰もがボランティアで参加できるわけではない。

 この点について石北氏の説明をによると、現在、多種多様な3Dプリンターがある中でボランティアから送られてきたさまざまな機種で実際に出力したサンプルにより、機種ごとの機能や特徴が把握できた。それによって、

  1. プリント出力における均一性を担保する必要性やその条件
  2. 品質管理と認証(承認)プロセスのためのプロジェクトチームの必要性
  3. 一定機能を有する3Dプリンターの世界での普及状況を知る重要性

が判明したこと、更に部品のデザインや製造マニュアルの改善にも役に立ったことが謝意をもって述べられている。

* * *

 先日、報じたマスクだけでなく、この試みがうまく進めば人工呼吸器も3Dプリンターで製造できるようになる。医療機器ゆえにその安全性などの検証は慎重さが必要なことはいうまでもないが、製造業ではその役割が広がっている3Dプリンターは医療現場でも活躍の余地がまだまだたくさんあるに違いない。また、可能性を見出したら、声を挙げて多くの人の力や知恵を活用し、進捗の速度を上げているこのプロジェクトからはオープンイノベーションのマインドが感じられる。この試みが順調に進むことを応援したい。

プロジェクトの詳細や寄付の方法などはこちらを参照(新潟病院のサイト)

連続実験の様子をライブ中継するYouTubeチャンネル「 ?VENT」

北元均 Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。