「紫外線」と「新型コロナウイルス」について書かれたニュースが連日のように報じられている。どんな紫外線をどのように使えば新型コロナウイルス退治ができるのだろうか。これまでのニュースを追いかけると、
- 紫外線の中で、波長280nm以下の「深紫外光(UV-C)」には強い殺菌作用がある
- しかし、この波長の紫外線は大気に吸収されて地上へは届かない
- そこで、紫外線光源を用いて、殺菌効果が期待できる波長(従来は254nmが主流)の紫外線を再現し、これを照らすことで無人環境下の病室や電車・バスなどの車両内部の殺菌を行われてきた
- しかし、UV-Cには強い殺菌作用があるが、人体の皮膚や目にも悪影響を及ぼすことが知られている
- だが、このUV-Cの中でも200nm〜230nmの波長は人体の皮膚や目にも安全で、かつ殺菌効果も期待できる
- ウシオ電機と米国コロンビア大学は、中心波長222nm紫外線を利用し、有人環境下で使用できるウイルス不活化・殺菌技術「Care222™」を確立した
- さらに先日、ウシオ電機と東芝ライテックは、この技術を用いた「Care222™光源モジュール」を搭載した紫外線除菌・ウイルス抑制装置を共同開発することと、このモジュールを用いた一般照明器具などの開発に関して業務提携することを発表した
ということがわかる。
これによって、有人の室内や電車内において、電灯のように天井から照射する紫外線で殺菌をすることが近い将来可能となりそうだが、最大の問題はこの222nm紫外線が新型コロナウイルスも不活化できるのかということだった。
これまでの実績や研究から、紫外線照射によってウイルスのDNA・RNAの螺旋構造に変化が起こり、損傷を受けたウイルス細胞の分裂が阻害されるため、新型コロナウイルスの不活化にもおそらく有効だろうと言われてきた。
そして、この度広島大学病院感染症科の北川浩樹診療講師、野村俊仁診療講師、大毛宏喜教授と広島大学大学院医系科学研究科ウイルス学の坂口剛正教授のグループは、紫外線照射装置「Care222™」を用いて、222nm紫外線による新型コロナウイルス不活化効果を世界に先駆けて明らかにしたことを発表した。この研究では、プラスチック上の乾燥した環境において、照度0.1mW/cm2の222nm紫外線を30秒間照射することで99.7%の新型コロナウイルス不活化が確認できた。
この研究成果は、American Journal of Infection Control 誌のオンライン版に掲載された。
今後、室内につけたランプで殺菌が可能になるなら、病院はじめ飲食、宿泊など消毒のためにさまざま努力と工夫を重ねている施設やその従業員には朗報だ。