【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.10】地球・惑星物理学の第一人者松井孝典教授に伺う、惑星探査と教育について

　マサチューセッツ工科大学のメディアラボの元所長で、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一が、さまざまなゲストを招きデジタル変革について考えていくポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ―変革への道― 」。

　今週は、地球・惑星物理学の第一人者である松井孝典先生をお迎えした。松井教授は、内閣府宇宙政策委員会の委員長代理を務めるほか、千葉工業大学の学長さらに、惑星探査研究センターや地球学研究センターの所長を務めている。

　番組では、松井先生が東大を定年で退官した後、千葉工大で同センターを設立するにいたった経緯が語られている。

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松井孝典（以下、松井）：退官した時は、その後、早稲田や慶応などに勤めて「いわゆる東大辞めた人が行くコース」を辿るのかなと思ってた頃に、千葉工大に誘われました。研究所を作ってくれて、しかも好きなようにやっていいというので、『こんな面白い話ない』と思い、千葉工大に行くことに決めました。

　千葉工大の惑星探査研究センターは、宇宙探査に関するさまざまな研究を行なっている。小惑星探査機「はやぶさ２」や、NASAのロケットに搭載されている観測機器の開発には千葉工大が大きく関わっているという。なかでも、その大学名が広く知られるようになったきっかけは、千葉工大が開発した流星観測カメラ「メテオ」を搭載した無人ロケットが２回連続で打ち上げに失敗したことだったという。

松井：日本ではすごいニュースになりました。目の前で爆発するんですから。爆発なんて初めてのことでしたからね。その後２回目も爆発して、３回目でようやく打ち上げに成功したんです。それが、千葉工大の宣伝にもなりました。千葉工大が宇宙をやってるなんて知らない人がほとんどでしたから。ものすごいインパクトだったんです。

　そして現在は、新しい研究所をもうひとつ千葉工大で立ち上げ、新たな研究に取り組んでいる。

松井：惑星探査研究センターは、軌道に乗ったので、私がいなくても自律的に研究が進んでいくんです。最近は、もっぱらトルコでの発掘に注力しています。

　トルコのアナトリア高原にギョベクリ・テペという人類最古と呼ばれる遺跡が存在している。この遺跡で発掘されたゴミ捨て場を調査することで、共同体がどのように生まれたのかを研究していくという。日本の惑星科学の第一人者である松井教授が、なぜ遺跡に取り組んでいるのか。

松井：遺跡の調査は、まさに惑星探査なんですよ。リモートセンシングで観測して、ビッグデータをどう解析するか（という点においては同じなんです）。惑星で行うことを、遺跡でやるだけなんです。つまり、地球にしても生命にしても文明にしても、なぜ発展するのかっていうことに関わることを研究しているんです。トルコのアナトリア高原で、人間圏という共同体が点的に発生するのか、ひとつの集落として生まれるのか、それともネットワークとして生まれるのか。などが追えると思っているんです。そういうことをやりながら「人間圏学」を作り、新しい概念を提唱していこうと思っています。

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　さらに、日本の高等教育についても話題は広がった。今年の11月から千葉工業大学で新たに研究センターを立ち上げることになった伊藤穰一が松井教授にアドバイスを求める場面もあった。

伊藤穰一（以下、伊藤）：大学側からは何やってもいいって言われていて、まだ半分悩んでるとこなんですけども、何かアドバイスがあれば教えてください。 

松井：僕は好きなようにやったとしか言いようないね。あと私のやりたいこととマッチすりゃ一緒にやればいいし。何かコアのプロジェクトをひとつ立ち上げるといいと思います。

新しい研究センターの詳しい内容については、番組の中で詳しく伝えている。

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけでなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFTをプレゼントしています。

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【編集ノート】

伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2021/12/20/005747.html

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#10　地球・惑星物理学の第一人者松井孝典教授に伺う、惑星探査と教育について

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