【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.25 】エンジェル投資家リード・ホフマン氏とweb3時代のビジネスについて考える

　マサチューセッツ工科大学でデジタル技術を主に研究するメディアラボの所長を務め、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一が、テック業界の最前線を走る人物にインタビューするポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ―変革への道― 」。

　前回に引き続き、テクノロジー界の重鎮リード・ホフマン氏が登場した。ホフマン氏はペイパルの創業に関わったほか、2002年にはビジネス系SNSのLinkedInを創業。投資家としても、FacebookやAirbnbといったWeb2.0時代を象徴する企業に関わってきた。

　インターネット界のドンでもあるホフマン氏に、web3の到来で何が変わるのかを聞いた。

＊　＊　＊

伊藤穰一（以下、伊藤）：現在、多くの人がweb3の到来について話をしています。web3は今後、追うべきトレンドとなりうるのでしょうか？

リード・ホフマン（以下、ホフマン）：私は間違いなく、web3信者の一人です。 2015年にはダボス会議で、「なぜ暗号通貨は未来にとって『ホンモノ』のアイテムであるだけでなく、未来にとって『良い』ものなのか」という内容の講演をしているくらいですから。web3の到来で、さまざまな「良いこと」がもたらされるように思います。しかし一方で、害のあるものももちろん増えてくるでしょう。経済的な価値体系や、他の多くのものに近づけば近づくほど、より注意深くならなければなりません。テロリズムや経済スパイ、あるいは違法ポルノなど、世界的な犯罪を加速させることになりかねないからです。そのため、すべての国がこの問題と向き合い、是正する必要があるのです。100％回避することはできませんが、悪い結果を回避し、俯瞰で見たときにはよい結果が残るように思います。

伊藤：私自身、Web1.0やWeb2.0に関わっていたときは、物事をもっと楽観的に捉えていました。しかし、何年も経つうちに、私が想像していたよりも悪いことがたくさん起こるのだということが分かってきました。また、あなたがおっしゃったように、より多くのお金が絡んできていますよね。これまでのサイクルを通じて学んだことの中で、web3の到来時に応用できそうなことはありますか？

ホフマン：そうですね。私も多くの人々と同じような学びの旅をしてきました。アーリーアダプターと呼ばれる人たちは、理想主義者やユートピアンが多く、性悪説を唱える人は多くありません。しかし、スケールした後は話が異なります。PayPalのユーザーが1億人を超えたあたりで、さまざまな問題がサービス内で起こりました。ユーザーが増えると、潜在的な犯罪者の割合も増えてきます。善人も悪人もすべて抱えることになるのです。マネーロンダリングする人、別の悪いことをする人など、現実社会と同様、雑多に混ざり合うようになるのです。そこで必要となってくるのが、ルールや裁判所、警察や、セキュリティシステムです。システムをより強固なものにして、備えていけば、ある程度犯罪は封じ込められるでしょう。しかし、ゼロにすることはできません。お金が絡むと、理想論者以外を呼び寄せるため、かなり早い段階で問題が噴出します。web3は、意図しないところで犯罪に巻き込まれる危険性をはらんでいます。だから私は、ある程度注意は必要であると考えます。

＊　＊　＊

　更にインタビューでは、web3でのオープンソースソフトウエア開発の未来や、分散型自立組織（DAO）とベンチャーキャピタルのかたち、web3で日本が活躍できる領域などについても話が及んだ。詳しくは、番組をお聞きください！

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。

https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0

【編集ノート】

伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/04/11/005779.html

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#25　エンジェル投資家リード・ホフマン氏とweb3時代のビジネスについて考える

https://joi.ito.com/links/