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「再生水ビール」を米社開発 通も黙る出来栄えに

米カリフォルニア州サンフランシスコの集合住宅地下階で、処理済みの排水と未処理の排水を見せる「エピック・クリーンテック」のライアン・プーレイ氏(2023年9月26日撮影)。(c)Loren Elliott / AFP

米カリフォルニア州サンフランシスコの集合住宅地下階で、処理済みの排水と未処理の排水を見せる「エピック・クリーンテック」のライアン・プーレイ氏(2023年9月26日撮影)。(c)Loren Elliott / AFP

【AFP=時事】生活排水からビール──。水の再利用に取り組む米企業が、都市部から出る排水を処理した再生水を使って、ライトでフルーティーな黄金色のアルコール飲料を製造している。

 その企業はカリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くエピック・クリーンテック(Epic Cleantec)。

 共同創設者で最高経営責任者(CEO)のアーロン・タータコフスキー(Aaron Tartakovsky)氏は、地球温暖化の影響で米西部が慢性的な干ばつに見舞われる中、一見「まずそう」な「未開拓の水源」に対する人々の意識を変えたかったのだと、ビール製造を手掛けるに至った背景を説明した。

「文明が始まって以来、ビールは人々を一つにしてきた」と語るタータコフスキー氏。「現在、気候変動に直面しているが、再生水があれば将来世代にわたって安心を確保できる。(ビール造りは)それを示すための格好の手段だ」

 ビールには、550戸が入るサンフランシスコの集合住宅計から出されるシャワーや台所、洗濯機などの排水が使われている。

 エピック・クリーンテックは、建物から出る排水を地下階で処理し、それを各部屋に戻してトイレの水として再利用したり、灌漑(かんがい)用に使ったりするシステムを手掛けている。

 ただ、カリフォルニア州では、処理水を飲料として再利用することは法律で禁じられている。

 タータコフスキー氏はしかし、どろどろに濁った水も、処理することで澄んだきれいな水に変わると指摘。「連邦法が定める飲料水の水質基準を満たせるどころか、それ以上の品質にすることもできる」と話す。

 それを証明するため、ビール醸造所とタッグを組み、再生水ビール「エピック・ワンウオーター・ブル―(Epic OneWater Brew)」を完成させた。ドイツの「ケルシュ(Kolsch)」にインスパイアされたビールだという。

■「ビール通でも区別がつかない」

 エピック・クリーンテックは、排水を3段階に分けて処理する。

 まず、バクテリアを使って不純物を処理する。人の体内で、摂取した食べ物や飲み物に腸内微生物が作用するのに似ている。次はろ過だ。毛髪の太さの1000分の1程度の穴が開いた膜を使う。 最後に、紫外線と塩素で消毒する。

 エピック・クリーンテックと共同で処理水ビールを手掛ける醸造所、デビルズ・キャニオン・ブルーイング(Devil’s Canyon Brewing Company)の創設者クリス・ギャレット(Chris Garrett)氏は、出来栄えに驚いたと話す。

 同氏は、普段のビール造りで使っている上水よりも、再生水を使った方が雑味が少ないようだとし、違和感は全くないと言う。市販ビールと再生水ビールを使ったブラインドテストを行っているというギャレット氏は、「ビール通にさえ区別がつかない。(市販ビールとの)違いはない」と語った。

 それでも、カリフォルニア州の法律では、エピック・ワンウオーター・ブルーは販売できない。

 タータコフスキー氏とギャレット氏は、現状は変わると期待し、大規模なイベントへと出向き、再生水ビールを無料配布している。最近ではニューヨークで開催された気象サミット「Climate Week NYC」に乗り込んだ。「人々の再生水への反応は思っていたよりも前向きだった。私たちのビールプロジェクトがそれを証明した」と、タルタコフスキー氏は話す。

 同氏は、自身の結婚式でもエピック・ワンウオーター・ブルーを提供したという。

■飲用化に向けて

 アリゾナ州スコッツデール(Scottsdale)など米国の一部地域では、排水を処理した水をゴルフ場での散水や農場での潅水に利用している。

 カリフォルニア州オレンジ郡(Orang county)では、再生水を地中に注入している。再生水はやがて帯水層にまで浸透し、最終的には再び上水用に取水される。一方、オレンジ郡では干ばつによって水源が縮小していることもあり、当局は再生水を環境中に戻さず、直接、飲用に処理するプロセスの承認を模索している。これは「DPR」として知られる処理方法だ。

 コロラド州では昨年、一足先に再生水の直接利用を開始した。アフリカ南西部ナミビアの砂漠地帯の都市ウィントフーク(Windhoek)では、数十年前からDPRが活用されている。ただ、反対の声も上がっている。反対派は、排水の再利用を「トイレから蛇口へ」と揶揄(やゆ)する。ただし、リサイクル技術そのものについては真っ向から議論しようとしない。

 そうした中、スタンフォード大学が最近公表した研究結果によると、再生水は水道水よりも品質が高い可能性があることが分かった。

 再利用水をめぐっては、海水を真水にする技術も存在するが、これにはより多くのコストがかかる。 研究論文の共同執筆者のビル・ミッチ(Bill Mitch)教授(土木環境工学)は「一般的には海水の淡水化の方が好まれる」とした上で、「(海水処理は)沿岸部で行わなければならない上、都市排水の処理よりもはるかに大量のエネルギーを必要とするため、コストが2倍程度になる」と説明した。近年、再生水を用いたビールはアリゾナ州とアイダホ州でも造られている。

 ミッチ教授は、「こうした動きが、『トイレから蛇口へ』といった、再生水について人々が抱いている印象を打ち砕いている」とコメントした。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。