【AFP=時事】5階建てビル並みの大きさの金属製容器にパイプやポンプが絡まる、1970年代のSF映画にでも登場するような装置──。日欧が協力し、量子科学技術研究開発機構(QST)那珂研究所(茨城県那珂市)に15年の歳月をかけて設置された核融合実験装置「JT-60SA」だ。
ドーナツ型の真空容器内に高温プラズマを閉じ込めて核融合を起こす「トカマク式」と呼ばれる装置で、昨年12月、運転開始記念式典が行われた。装置は高さは15.5メートルで、幅は13.7メートル。
欧州連合(EU)と6か国がフランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)の弟分に当たる。
容器内では何百万度という高温で実験が行われる。二酸化炭素(CO2)を排出せず、無尽蔵の燃料を使う安全な未来のエネルギー源としての核融合発電に資するとされている。
案内役のEU側のプロジェクトリーダー、サム・デービス(Sam Davis)氏は「核融合エネルギーは太陽や恒星と同じ反応で生み出され、1950、60年代に地球上で太陽のパワーを再現する方法が模索され始めて以来、数十年にわたってエネルギー分野の研究における大きな目標となってきた」と、AFPに語った。
「(核融合によって)温室効果ガスや長寿命放射性廃棄物から解放されるだけでなく、コンパクトで景観を損なうこともなくなる。産業用に有用な量の電力を生み出せるようになる」
現行の原子力発電所では原子核を分裂させる核分裂が使われているのに対し、核融合は、二つの原子核を合体させることで膨大なエネルギーを生み出す。
推進派は、こうした反応は安全であり、核兵器用の核分裂性物質や、分解に何千年もかかる有害な放射性廃棄物のような厄介な副産物を発生させないと主張する。
JT-60SAでは、水素同位体の原子核を融合させてヘリウムなどの原子核に変え、エネルギーを発生させるという、太陽をはじめとする恒星の内部で起きているプロセスを模倣しようとしている。
日本側の鈴木隆博(Takahiro Suzuki)那珂研究所先進プラズマ研究部次長によると、たった1グラムの混合燃料で、石油8トン分に相当するエネルギーが得られる。
ITERやJT-60SAが目指すのは、投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを大規模に、長期にわたって放出させる技術の開発だ。
デービス氏はこう語る。「核融合が将来のエネルギーミックスに貢献するのは間違いない。どの程度時間がかかるか正確に言うのは難しいが、最終的にはこの分野にどれだけの投資がなされるか、そして社会がソリューションとしてどれだけ追求したいかにかかってくる」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件