
資料写真 - ドイツ航空宇宙センターの記者会見で展示された火星探査車イデフィックスの模型
【東京(dpa)】日本の宇宙探査機が火星への飛行に向けて無事に出発した。2029年に火星の衛星フォボスへ独仏共同開発のローバー「イデフィックス(Idefix)」を着陸させる計画だ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導する無人探査ミッション「MMX(火星衛星探査計画)」は、2031年にフォボスからの史上初となる試料(サンプル)を地球へ持ち帰ることを目指している。
探査機は日本南西部に位置する種子島の宇宙基地から、H3ロケットによって打ち上げられた。探査機は約1年の飛行程を経て2027年に火星に到達し、火星を周回する軌道に入る見通しだ。
その後、フランス国立宇宙研究センター(CNES)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発したローバー「イデフィックス」が、2028年末から2029年初頭にかけてフォボス上空約40メートルの高度から放出される予定である。ローバーは地表へ自由落下し、着陸後に自力で起き上がって衛星表面の探査を開始する。
DLRによれば、イデフィックスは飲料ケースほどの大きさで重量もわずか25キログラムにすぎないが、本格的な科学探査ローバーに見られる観測機器のほとんどを網羅している。その軽量設計とフォボスの極めて小さな重力により、専用の着陸機を介さずともフォボスへ直接降り立つことができる。
イデフィックスは約100日間にわたり衛星表面を探査する予定で、火星の衛星上で活動する初の探査ローバーとなる。
フォボスとダイモスは、地球の月と並び、太陽系内側の領域(地球型惑星領域)に存在する唯一の衛星である。いずれも地球の月よりはるかに小さく、歪な形状をしている。フォボスの差し渡しは最大部で27キロメートル弱、ダイモスの最大直径は約15キロメートルにとどまる。フォボスの表面温度はマイナス150度からプラス30度の範囲に及ぶ。
MMXミッションは、これら2基の衛星が捕獲された小惑星なのか、それとも火星への巨大天体衝突で宇宙空間へ撒き散らされた破片から生まれたのかを特定する手がかりを得ることを目指している。
JAXAによると、このミッションは火星や太陽系の形成史を解明するだけでなく、生命の起源を探る研究にも資するものとされている。
ローバー「イデフィックス」は、フランスとドイツの宇宙機関によって開発された。その名称は漫画『アステリックス』に登場する犬に由来する。フランス語の原版では「固執・偏執(idée fixe)」に掛けた言葉遊びとして「Idéfix」と名付けられている(なお、英語版ではこの犬の名は「Dogmatix」と表記される)。