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「永遠の命」はテクノロジーで実現できるか/すべきか? Futurist Meetupレポート

ミートアップの趣旨説明

 最近、先進的なビジネスの現場で注目されているもののひとつが「アート思考」だ。未来を想起してイノベーションを起こしていくためには、ロジカル(論理的)な思考法だけでなく、アーティストの感性や思考法を取り入れることにより、新しい観点を得ようという手法が注目を集めている。

Futurist Meetupの様子

Futurist Meetupの様子

 2018年4月11日、東京・恵比寿の株式会社デジタルガレージで第4回“Futurist Meetup”が開催された。“Futurist Meetup”はデジタルガレージが主催し、提供するオープンイノベーションの場であり、これまでも「腸内細菌叢データとAIで、私たちの生活は変わるか?」、「個別化医療とブロックチェーン」、「医療現場 x VR/AR」など「バイオ+α」のテーマで自由に意見を交わしてきた。

 デジタルガレージ担当者によると、今回は「未来をつくるのは、テクノロジーではなくアートかもしれない」という問いかけのもと、「“永遠の命”はテクノロジーで実現できるか?/すべきか?」というテーマで、アーティストの感性や思考法に触れ、参加者に未来思考を体験して欲しいという。同テーマに関心を抱いたバイオテクノロジー関連のビジネスパーソン、起業家、研究者、学生などの参加者で会場は満席となった。

なお当日のパネラーは以下の面々だ(敬称略)。

長谷川愛

アーティスト。実在する女性カップルの遺伝子情報の一部から、生まれうる子供の姿・性格等を予測し「家族写真」を制作した“(Im)possible Baby”で19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞を受賞。

榎本輝也

研究者、東京工業大学 情報理工学院。細胞サイズの微小空間内における人工的な生化学反応系の構築を研究。

藤村憲之

デジタルガレージ DG Lab 所属UXデザイナー。建築や照明、映像を用い、人との思いがけない出会いをテーマに作品を制作。

* * *

「“永遠の命”についての作品で思いつくものがありますか?」との問いかけで始まったこの夜のイベント。その答えとして会場の参加者からは「火の鳥(手塚治虫)」という声が上がる。長谷川氏は「バンパイヤもの」「ロード・オブ・ザ・リング」「紙の動物園」、榎本氏は「攻殻機動隊」、藤村氏は「銀河鉄道999」を挙げた。

 次いで「“永遠の命”が欲しいですか?」との問いに長谷川氏は「自分は“永遠の命”は欲しくない」と述べ、「アニメなど見てもとくにいいことがない(笑)」と会場を沸かせた後、「寿命のテクノロジーがお金で買えてしまうという映画を見たとき、とてもリアリティがあって、自分の中では長寿の話は終った」と話す。榎本氏は「“永遠の命”はとくに欲しくない。今まで関わってきた人にどこかで思い出して欲しい。それは法要とか宗教的なものかもしれない」と話す。

 長谷川氏の作品“(Im)possible Baby”が投影される。同性同士から子どもが生まれるというインパクトの大きい作品。「科学者においても『安全性が担保されて議論が十分されれば肯定的にとらえる人』もいれば『こういう話は議論が空転してしまうので時間をとった方がいいと述べる人』などいろいろだ」と同氏はこの作品についてさまざまな反応があると述べた。

 同性間で子どもができることについての賛否を会場に問うと、その反応は「いやだ」に挙手がちらほら。「いいのでは」がそれより少し多いくらい。手を挙げるのに戸惑うような雰囲気だ。

 さらに「長生きしたいですか?」との問いには。「長生きしたい」とする人はあまり多くなく。意外なことに「長生きしたくない」という人は多い。さらに「何歳くらい?」と問いかけると、概ね80歳ぐらいに落ち着く。

 榎本氏は「生物学的には120歳ぐらいまで生きられるというのがサイエンス的見解です」と述べ、「テロメア(細胞の染色体の端にある物質)を伸ばすともっと長く生きられるかもしれないが、今度はガン化するリスクもあるかもしれない」という生命体の持つ不思議なバランスに言及した。

 1時間のパネルディスカッションが終わり、ワークショップに移行する。4人でグループを作るように促され、「100年後の子孫のためにどんな“永遠の命”を残したいか?」をテーマに話し合う。見知らぬ同士の対話がスタート。異なる意見を真剣に受け止め、自分の意見を述べ合う参加者の「熱」は高い。ワークショップ後に、参加者が手を挙げ感想を述べる。

ワークショップで感じたことを参加者が自由に話す

ワークショップで感じたことを参加者が自由に話す

「『人の精神を“適切に老人にする”テクノロジー』が必要ではないかと思います。体は朽ちていくのに精神が若すぎるのは逆に弊害では」

「永遠の命は絶対欲しいです。どうしてみなさん死を許容できるのか? 「自分でタイミングをはかって死ねるなら死んでもいい」というのは、死んだ後も自分の意識があることが前提ではないのでしょうか?」

「“永遠の命”があると、テクノロジーの進歩が遅くなってしまうのでは? 死を避けたいと考えることがテクノロジーの進歩につながるのではないでしょうか」

など、さまざまな意見が発表された。

 これらについて参加者とパネラー、モデレーターが意見を交わし、2時間ほどでミートアップは終了し懇親タイムとなる。デジタルガレージ担当者に話を聞くと、「当社(デジタルガレージ)はITの会社というイメージが強いかもしれませんが、ずっとバイオテクノロジーに注目し、有望な研究を支援しています。このミートアップの参加者とコミュニティを作り、やり取りを続けており、有望な提案をしてくれる人には起業や事業拡大の支援も予定しています」と話した。今回のミートアップの参加者の中から、「火の鳥」の世界を現出する才能が出てくるかもしれない。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。