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ブロックチェーンのSNS「Steemit」が分散型アプリ開発のプラットフォーム提供へ

メディア向け説明会でSMTについて説明するスコットCEO

メディア向け説明会でSMTについて説明するスコットCEO

 ブロックチェーンを使った世界初のSNS、米Steemit(スティーミット)は、Steemブロックチェーンで稼働する分散型アプリケーション(Dapps=Decentralized Applications)開発の基盤となる「SMT」(Smart Media Tokens)を2019年にも一般開放する。すでに実証実験を行っており動画サイト「DTube」などが稼働している。「世界で10万人以上の起業家が、分散型アプリをつくることが目標」としている。

「起業家にチャンス」

 Steemitのネッド・スコット(Ned Scott)CEOらが5月に来日し、東京都内でメディア向け説明会とユーザーとのミートアップに出席、プレゼンテーションを行った。先に韓国ソウル大学なども訪れており、ミートアップはアジア地域や日本でのSteemitコミュニティの拡大が目的。

ユーザー、ファンとのミートアップ

ユーザー、ファンとのミートアップ

 スコットCEOによると「SMTは、イーサリアムのERC20(Ethereum Request for Comments: Token Standard#20)と同様の、Steemitの統一的な技術仕様」。Steemブロックチェーン上でトークンの発行ができ、SMT上で発行されたトークン同士であれば交換が可能だ。

 スコットCEOはSMTのメリットとして①ICO(Initial coin offering、仮想通貨・トークン発行による資金調達)が可能になること②コンテンツのマネタイズが容易になること③コンテンツが拡大しユーザーの参加モチベーションが上がることで、SMTプラットフォーム自体が拡張すること―の3点を挙げた。その上で「今後オープンソースアプリ、Dappsはどんどん生まれてくると考えている。起業家にもチャンスで、そのための新しい規格がSMT。Steemitの情報がそのまま利用できる」と述べた。SMTでは現在、DTubeなど350のアプリが稼働しているという。

 分散型アプリは、オープンソースかつブロックチェーンを使った非中央集権型のアプリで、利用や報酬にトークンが使用されるのが特徴。管理者がおらずルールに従って稼働する。昨年にイーサリアムのブロックチェーンで動く、猫を飼って育てるゲーム「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」が話題になった。ゲームのほか分散型の仮想通貨取引所、予測市場といった分野で有望視され将来、アプリ開発・利用環境を激変させるとも予想されている。

Steemitの仕組みと未来

 Steemitは「良いコンテンツを投稿すること、良いコンテンツをキュレーション(評価)する」ことで報酬としてトークンを配分するSNSプラットフォーム。2016年3月ローンチし、17年ごろからユーザーが急増。現在、世界で100万のユーザーがいて、日本では約200人がアクティブに活動しているとみられる。九州のブロック紙、西日本新聞社(福岡)は、Steemitでの記事配信実験を行っている。

 Steemitには、セキュリティ対策やスパム防止、また後述するトークンエコノミーのインフレ対策として①STEEMなど、役割や機能がそれぞれ異なる3種のトークンが存在する、やや複雑な仕組みになっている。コンテンツの投稿・評価によっては②SP(Steem Power)と③SBD(Steem Blockchain Dollars)というトークンをそれぞれ50%ずつ得ることができる(割合は選択可能)。

 トークンの機能はそれぞれ、

  • STEEM=取引所(日本国内では取り扱いなし)でビットコインやイーサリアムと交換可能。ユーザー同士も送金可能
  • SP=保有量に比例してキュレーションの影響や得られる報酬が多くなる。利子もつくので、SPを保有することがユーザーの経済的インセンティブになる。SP→STEEMの交換は1週間ごとに13分の1までに制限されており、すべてをSTEEMに交換するには約3か月が必要
  • SBD=1SBDが1ドルとほぼ連動。すぐに現金に交換可能

 これらSteemitのトークンは新規発行によって供給される。そのため、Steemitのトークンエコノミーはインフレ傾向で、トークンの価値は相対的に減少していくことになる。SP→STEEMの交換に時間がかかるのは、インフレ対策としてSP保有にインセンティブを与えているためとみられる。また、インフレ問題はSteemitのユーザーが増えネットワークが拡大している間は顕在化しないが、ネットワークの拡大が止まった場合、STEEMの価値が毀損され、さらにユーザーが離れるというスパイラルに陥るとの指摘もある。

 ミートアップなどでスコットCEOは「ICOにも怪しいものが多いが、実際に稼働しているサービスを見るべきだ。Steemitはコンテンツの質を上げ、価値を見える化している。日本には悲観的な人が多く、日本市場は熱量がまだ小さいが、これから大きくなるだろう」と期待を寄せた。

ミートアップでのサンドイッチ

ミートアップでのサンドイッチ

 また、仮想通貨・トークンの将来について「金(ゴールド)、法定通貨、金融商品などは、価値の保存や移動にそれぞれの欠陥があった。仮想通貨はこれまで多くの人が望んでいた価値の保存や移動、尺度といった機能を備えていると考えている。仮想通貨は高騰とクラッシュを繰り返すたびにメディアに注目されるが、長い目で見ると右肩上がりのポジティブな状況。”価値の仲介役”として、ポジティブに変化していく」との見解を示した。

Smart Media Tokens on the Steem Blockchain

DTubeとは

Steemit Is First Social Media Platform Built on Top of … – Bloomberg

 

田中 徹 Written by
北海道新聞で記者を経て現在、東京支社メディア委員。デジタル分野のリサーチ、企画などを担当。共著書・編著に「頭脳対決!棋士vs.コンピュータ」(新潮文庫)、「AIの世紀 カンブリア爆発 ―人間と人工知能の進化と共生」(さくら舎)など。@TTets