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ブロックチェーン・ガバナンス推進のプラットフォーム発足 略称は「ビギン」

BC2Gサイトより

BC2Gサイトより

 3月10日、分散型金融システムにおけるガバナンスを議論するカンファレンス「Blockchain Global Governance Conference (BG2C)」において、今後のコミュニケーションのプラットフォームとなる国際ネットワーク「Blockchain Governance Initiative Network (BGIN:呼称はビギン)」の設立が公表された。ブロックチェーンに関わる多様な専門性と地域性を持つ23人の発起人からなるこの組織の目的は、公表された資料によると以下の3点となる。

  1. オープンかつグローバルで中立的なマルチステークホルダー間の対話形成
  2. 各ステークホルダーの多様な視点を踏まえた共通な言語と理解の醸成
  3. オープンソース型のアプローチに基づいた信頼できる文書とのコードを通じた学術的基盤の構築

 当媒体でもこれまでに何度か解説してきたように、ブロックチェーンは分散型金融技術の中核となるものでありながら、今までのところその技術開発は、ボランタリーに活動を進めるコアの技術者を中心として、規制当局の管理の枠外で進められてきた。暗号資産やセキュリティートークンなどすでに実用化され、今後より重要性が増すであろうこうした技術について、当局は規制の実施はおろか、その前提となる技術情報を把握するためにエンジニアと共通言語をもってコミュニケーションをすることすらままならない状況にあった。

 こうした実情を鑑み、日本の規制当局においては幅広いステークホルダーの参加の元に国際的なルールを策定していくことの重要性について早くから認識しており、2019年に日本で開催されたG20などの場において国際的な合意形成を積極的に進めてきた。今回発表された「BGIN」はその成果として設立したもので、今後は多様なステークホルダーによる相互理解と協調の元にブロックチェーンの有用性を高める議論とさまざまな作業が行われることが予定されている。

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 設立にあたって実施された報道関係者向けの説明会では、補足的な解説がなされた。

 説明にあたったジョージタウン大学の松尾真一郎氏によると、「BGIN」はインターネットにおいて技術的な標準化をリードしてきた「IETF(Internet Engineering Task Force)」の組織運営などをモデルとしている。こうしたオープン性の高い作業部会がルール策定の土台となることは金融分野においてはこれまで前例がないが、技術(プログラムコード)が時にはルールとして機能することもあるインターネットにおいては常識的な手法で、ブロックチェーンにも同様の考え方ができるという。運営は年に3回のミーティングを開催し、議論のプロセスやそこで開発・提案された標準的ドキュメントなどもオンラインでオープンにしていく予定だ。

 具体的に取り組まなければいけない案件としては、マネーロンダリングの対策やセキュリティ、プライバシーの課題解決などが挙げられた。いずれも喫緊の課題でありながら当局の規制が十分に及んでおらず、ルール整備やその前提となる用語や理解の共通化が急がれる分野である。

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参考資料(金融庁提供の参考資料より)

BGIN創設メンバー(名字のアルファベット順)

ジュリアン・ブリンガー カリスティック CEO

ブラッド・カー 国際金融協会(IIF)シニアディレクター

ミシェル・フィンク 独マックス・プランク・イノベーション研究所 シニア研究フェロー

ホアキン・ガルシアアルファロ 仏Institut Mines-Télécom 教授

バイロン・ギブソン 米スタンフォード・ブロックチェーン研究センター プログラム・マネジャー

李 慧 フォビ・ブロックチェン・アカデミー ディレクター

フィリップ・マーティン コインベース 最高情報セキュリティ責任者

松尾 真一郎 米ジョージタウン大学 研究教授

三輪 純平 金融庁 フィンテック室長

カタリーナ・ピスター 米コロンビア大ロースクール 教授

ニー・ナルク・クエイノア ガーナ・ドット・コム 会長

ジェレミー・ルービン 

ダニー・ライアン イーサリアム財団 コア研究者

デービッド・リプリー クラーケン 最高執行責任者

崎村 夏彦  OpenID Foundation  理事長

佐古 和恵  Sovrin Foundation 理事

マイ・サンタマリーア  アイルランド財務省  ファイナンシャルアドバイザリー部門長

須賀 祐治 株式会社インターネットイニシアティブ / CGTF シニアエンジニア

鈴木 茂哉 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授

高梨 佑太 金融庁 総合政策局総務課国際室課長補佐

ロバート・ワードロップ 英ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センター ディレクター

ピンダー・ウォン VeriFi (Hong Kong) 会長

アーロン・ライト 米イェシーバー大学カルドゾ・ロースクール 教授

以上

Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。