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新駅「高輪ゲートウェイ」は条件に恵まれたイノベーションの実験現場 

開業前から書体が話題となった駅名板

開業前から書体が話題となった駅名板

駅構内は明るく柔らかな印象
駅構内は明るく柔らかな印象

 JR東日本の山手線と京浜東北線の新たな駅「高輪ゲートウェイ」が14日に開業した。山手線の新駅設置は1971年4月に開業した西日暮里駅以来にとなる。新型コロナウイルスのため開業イベントが中止になったにもかかわらず、開業初日は記念のきっぷを求める鉄道ファンや見物客などで混雑した人気の新駅に、開業フィーバーも一段落した週明けの月曜(16日)に降り立ってみた。

 なにもかも真新しい駅には、この日も多くの見物客が降車し、あちらこちらで記念撮影をする姿があった。駅を覆う大屋根は光を透過する素材でできており、建物の要所に明るい色の木材が部材として使われているため、全体的に明るく柔らかな印象となっている。高輪ゲートウェイ駅は新国立競技場と同じく、隈研吾氏がデザインアーキテクトとして関わっている。

日立のEMIEW3は手前にあるディスプレイを活用して案内
日立のEMIEW3は手前にあるディスプレイを活用して案内

 環境配慮とあわせこの駅のもうひとつのウリは、AI(人工知能)やロボットなどだ。案内や警備・清掃などさまざまな自律移動型のロボットの試行サービスが行われるとリリースにはあったが、当日取材中に駅で見ることができたロボットは日立製作所のAI案内ロボット「EMIEW3」のみ。日英中韓の4カ国語で案内をするこのロボットは、駅通路の一角に設けられたインフォメーションコーナーに陣取り、挨拶や簡単な案内を行っていた。リリースには他にもパナソニック(案内・移動支援 移動ロボットは「WHILL NEXT」)やアマノ(自動清掃)、日本信号(自動清掃)などの自立型ロボットが紹介されている。これら駅業務を行うロボットの試行導入や実証実験は、JR東日本がオープンイノベーションの取り組みとして関係各社と協力をして進めている「モビリティ変革コンソーシアム」の実証実験のひとつで、2019年12月にはさいたま新都心駅でも同様のロボットを使った実験が行われた。

AI 決済店舗 「TOUCH TO GO」は23日から
AI 決済店舗 「TOUCH TO GO」は23日から

 この駅での新しい取り組みとしてもうひとつの注目は、 東日本スタートアップ株式会社とサインポスト株式会社が出資したスタートアップ、株式会社 TOUCH TO GOが運営するAI 決済店舗 「TOUCH TO GO」だ。これまで赤羽駅と大宮駅で小規模な実証実験が行われたが、ここでは駅の常設店舗として営業する。(正式なオープンは23日となっており、この日はまだ営業を行っていなかった)駅のような慌ただしい場所で、決済まで無人の店舗がスムーズにお客をさばくことができるのかが注目される。これまでの実証実験で得られた知見から対応策は練られていると思うが、今後ここでさらに色々な試行錯誤が行われることだろう。

駅前は工事中
駅前は工事中

 高輪ゲートウェイ駅の駅前のほとんどのスペースは工事中。まちびらきは2024年頃になるということなので、それまでは他の山手線駅に比べると乗降客も控えめな数になるだろう。

 その間を利用して、このように駅を使ったオープンイノベーションの場として積極的に活用される予定だ。都内にあり、それも“山手線の駅付きの実証実験エリア”などという贅沢な場所は、他では決して真似できない貴重な空間といえる。この機会をうまく利用して、多くの試みがこの駅で展開されることを期待したい。

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。