今回のゲストは、前回に引き続き武邑光裕氏。
話題は「パラダイムシフトのために変えなくちゃならないものは?」といったことや、日本とは異なるヨーロッパの政治風土の話題などだ。
また最後に「変革会」という新たなプロジェクトを立ち上げたことについても少し触れられている。
今回も2人の会話の一部を抜粋して、以下に紹介したい。
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伊藤穰一:日本では、デジタルトランスフォーメーションとか、NFTとか、何かすごく大きなシフトが起きようとしている感じがして。なんか今また技術だけじゃなくて、文化とクリエイティブと社会的なところ、もっとちょっと違うレイヤーでやらなきゃいけないような感じがしませんか?
武邑光裕:そうですね。結局「テクノロジーをどう考えるか」ということの前に「社会のパラダイムをどう考えるか」という視点がどうしても必要で。そこを見ないと、結局テクノロジーをコントロールできなくなるというか。日本はどっちかというと、クリエイティビティとテクノロジーというものが融合した世界だというのは、頭では分かっているんだけど、なかなか実現するのは難しい時代をずっと続けてきた。そこは今、日本ではものすごく重要なポイントだなと思いますよね。
伊藤穰一:システムを変える時って、技術を変えたりルールを変えたり、色々なことを変えることができるんだけれども、そもそものゴールを変えるというのがすごく重要で。そのゴールはどこからくるかっていうと、パラダイムから来るんだよね。それをちょっと社会に当てはめると、とにかく「自分がなるべくお金を稼いで他の人たちを勝ち抜いていく」っていうのがパラダイムだとすると、ゴールは「お金持ちになる」だったり、「大きい会社を作る」のがゴールだったりするんだと思うんですけども。そうすると技術を変えたり、ルールを変えても、ゴールを変えない限り、あまり世の中変わらないんですよね。
そういう意味で言うと、デジタルとか、色々なものを変えるのはいいのだけれども、ゴールがやっぱり今までと同じだと、あんまり社会は変わんないんじゃないかなっていうのが心配ですよね。
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伊藤穰一:(日本は)結構、大量生産とオプティマイゼーション(最適化)で発展の時代はやってきたから「機械的にわかりやすく整理してきっちりやれば直る」っていう鉄道を作るような感覚で、デザインできるっていう風な気持ちになってるんだけども。もうそういう政策じゃ無理で。アジャイルで、複雑で、アダプトしながら多様な方向でやんなきゃいけない時代なので。そういう意味でいうと、日本なんかはきっちり整理して、みんなで揃えてやるとかっていうのはメカニカルな時代で、自己適応型複雑系の時代じゃないんですよね。
武邑光裕:そうですね。ベルリンという都市を見ていると、自己適応型の自己組織化していく複雑系なんですよね。行政のガバナンスが「こうしろ」とか「ああしろ」とか「ああやろう」と言ったことはことごとく失敗して。そのボトムアップで、知らないうちにベルリンがスタートアップの町になってたみたいな。そういう自己組織化していくエネルギーとか力というものは、やっぱりすごく感じますしね。
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武邑光裕:ヨーロッパではもう20年ぐらい前から、敵同士だった行政とスタートアップとか個人というのは、お互いが必要だということをみんなわかり始めて、決して仲違いするだけではない。敵対視することは、お互いにとって良くないことというのを実感している。
伊藤穰一:僕もちょうど先週クロアチアの友達と話してたら、知らないうちに何か彼がグリーンパーティーの立ち上げに関係して、もう選挙にハマってガバナンスの方に回ってきていて。なんか下手すると代議士になっちゃいそうで。ただ心はあんまり変わってないんだよね。なんか本当に何かアンダーグラウンドなサブカルチャーの人たちが国会にいるっていう。すごく面白いですよね。ヨーロッパって。
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伊藤穰一:あと今日、実は一部のメンバーたちにパイロットでZoomで「変革会」っていうのを開いて、集まっていただきました。クラブイベントなどの企画をよくやった武村先生と僕も、だんだん懐かしい気分で、どうやってこの新しいコロナの時代、Zoomの時代で、クラブで起きたようなセレンディピティとワクワク感を味わえる場が作れるのかっていうのを、いろいろディスカッションしてるんで。(中略)だんだんちょっと何か光が見えてきたので、それもいずれか皆さんに紹介したいと思います。
【JOI ITO 変革への道 -Opinion Box】
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【編集ノート】
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#2 DX推進が加速する中、社会や文化のあり方も変革が必要!?