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折りたたみ式電動バイクは商品化へ~Maker Faire Tokyo 2022

タタメルバイクとICOMA代表生駒氏。左下の黄色い立方体が畳んだ状態

タタメルバイクとICOMA代表生駒氏。左下の黄色い立方体が畳んだ状態

 東京ビックサイトで開催された「Maker Faire Tokyo 2022」(9月3・4日)には、多くのメイカーたちが自らの製作物を持ち寄った。2021年の「Maker Faire Tokyo 2021」は、オンサイト(対面)イベントが中止になったことで、出展者も入場者も満を持して今年の開催を心待ちにしていた。会場は熱気に満ちており、また、子ども連れの客も多く、迷子のアナウンスが流れるほどの活況を呈した。

進化していた「タタメルバイク」

タタメルバイクをたたむ生駒氏
タタメルバイクをたたむ生駒氏

 展示会場には、ものづくりを世に問いたい個人のメイカーをはじめ、それをサポートする商品を販売する株式会社スイッチサイエンスのような企業。メイカー魂を持つスタートアップの株式会社CuboRexやインターステラテクノロジズ株式会社など、当媒体でもおなじみの企業が出展していた。また、モビリティのメイカーの中でも注目を集めていたのは、株式会社 ICOMA(本社:東京都中野区 代表:生駒崇光)の折りたたみ式電動バイク「タタメルバイク」だ。このタタメルバイクについても、2020年の記事の中でも紹介している。その時点ではプロトタイプとしての参考出品だったが、2年を経て商品化にこぎつけた。

 改めて今回展示されたタタメルバイクの車体サイズは、走行時のバイクの状態(ミラー含む)で全長1230mm×全高1000mm×全幅650mm。折りたたんだ状態では、全長700mm×全高680mm×全幅260mmと大きめのスーツケースくらいのサイズになる。前回の参考出品時では全長650mm×全高620mm×全幅250mmだったので、ほんの少しだけ大きくなったようだが、大型のタワー型PCの筐体のように四角くまとまる。ゆえにオフィスのデスク下にもうまく収まり、自宅では部屋に持ち込んでも問題なさそうだ。重量は約40kgなので、持ち上げるには重い。だが、折りたたみ時も接地面にはタイヤがあり、実際に押して試してみたが、転がしての移動は問題ない。

 タタメルバイクの航続距離は、3時間充電で30㎞程度になるそうだ。運転には原付き免許とヘルメットが必要になる。もちろん公道走行が可能であり、展示車にも「松戸ナンバー」がちゃんと着いていた。

折りたたむことで机の下にも(ICOMAのHPより)
折りたたむことで机の下にも(ICOMAのHPより)

 社長であり開発者の生駒氏に話を聞いた。タタメルバイクは、「電動バイク」であると同時に、バイクとして使える「大型ポータブル電源」であり、非常用電源として家に備えて欲しいという。USB経由で充電・供給が可能で、スマートフォンなら100回以上充電可能とのことだ。災害の時は非常用電源にもなるし、その非常用電源に乗って避難することも可能だ。

 価格は今のところ未定だが、あまり高額にならないような価格を想定しているという。ハードウェアとしての特徴は「金型を持たない」こと。部品の大半は特注品ではなく、市場で調達可能なパーツなどで組み立てている。

 生駒氏は、株式会社タカラトミーの出身であり、プロダクトデザイナーとして変形ロボット玩具「トランスフォーマー」などに携わってきた。さらに、家電ベンチャーのCerevo、家庭用ロボット「LOVOT」を開発するGROOVE Xの2つのスタートアップにも参画してきたというキャリアを持つ。「変身」と「テクノロジー」を掛け合わせるプロと言えるだろう。2019年から個人での活動をスタートさせ、前述のようにこのタタメルバイクを2020年のメイカーフェアに参考出品したところ好評を得たため、法人化したのが株式会社 ICOMAだ。

 法人化したということは、将来的な量産化にも目指しているわけだが、最初は好きな人に向けて少しずつ作っていき、2、3年経過したところで大量生産に持って行けたらと生駒氏は考えているという。スタートアップとしての資金調達も徐々に始めているものの「まだアーリーでもないシードステージでしょうね」と笑った。

子ども向けワークショップも充実

 今回のメイカーフェアでは、子どもを意識した展示が多く、特子ども向けワークショップも多く開催されていた。

 なかでも、喫茶店のメニューのようにさまざまなプログラミング体験を提供する「子どもプログラミング喫茶」では、多くの子どもたちが対面やリモートで楽しそうに学んでいた。スタッフに聞くと、講師を努めているのも高校生などが多く、自分たちが学んだことを、さらに小さな子たちにも教えたいということらしい。

子どもに大人気。ダンボール恐竜
子どもに大人気。ダンボール恐竜

 また、メイカーフェア会場内を練り歩く「うちのシロ」というダンボール製恐竜を操るグループは、ティラノサウルスの「歩くと揺れる尻尾と頭(帽子)」を作る「なりきりティラノ」のワークショップを開催し、これもまた多くの子どもたちを集めていた。ティラノサウルスの頭をかぶり、尻尾をつけた子どもは、ビル街のセットの前でポーズをとり、怪獣もどきの写真を撮影してもらって親子ともども大喜びだった。スタッフに、「ダンボールの啓蒙か何かにつなげる試みなのか」と聞くと、「まったく関係ない」とのこと。ダンボールのワークショップや恐竜制作は好きでやっているだけであり、子どもたちに喜んでもらえればうれしいとのこと。

 会場内を見渡すと、「分解ワークショップ」や「みんなで “メイカー新聞” をつくろう」などの他にも子ども向けワークショップが見られた。株式会社マクニカもLEDバッジを作る「ハンダづけ体験コーナー」を運営。他にもキオクシア(「はたらくSSD・かんがえるSSD」)など著名企業がブースを出しており、大企業も向けて子どもたちに情報発信を行っていた。今回参加した子どもたちは、いつかメイカーとなって、出展者として名を連ねることになるかもしれない。

Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。