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CES2019レポート:CES出展でスタートアップは何を得るのか?

J-Startupの展示エリアにて

J-Startupの展示エリアにて

 米国ラスベガスで2019年1月8~11日に開催されたコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES 2019」には、世界各国から参加したスタートアップばかりを集めた会場があった。「Eureka Park」と名付けられたこのエリアでは、ここ数年、国を挙げてスタートアップの育成を図っているフランスからの参加企業が目立つ他、オランダやイタリア、韓国なども国単位での出展をしていた。日本も経済産業省のベンチャー支援プログラム「J-Startup」の活動の一環として、ジェトロが用意したスペースに国内ベンチャー22社がまとまって展示、会場内でもそれなりの存在感を示していた。人手と時間を割いて、こうした海外での展示会に参加することは、日本のスタートアップにとってどのようなメリットがあるのだろうか?J-Startupのエリアに出展していた企業に話を聞いてみた。

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株式会社Shiftallのクラフトビールの自動補充サービス「DrinkShift」

株式会社Shiftallのクラフトビールの自動補充サービス「DrinkShift」

 ここに集まったスタートアップの業種はさまざまだ。パナソニックの子会の株式会社Shiftall(東京都中央区)は独自に開発したビール専用冷蔵庫を展示していた。木目のパネルを使った家具調の冷蔵庫には12本のビール瓶が収納できる。冷蔵庫に入っているビールの本数を常時管理しており、なくなりそうなタイミングを利用状況から予想し、在庫を切らさないように自動発注する仕掛けがあり、これがこのサービスの特徴だ。「DrinkShift(ドリンクシフト)」という名称の同サービスは現時点では日本国内での展開を予定しているが、今回出展したところ、来場者からも予想外の注目を集め、海外展開にも可能性を感じたという。

 ただ、自宅でのパーティー利用などを想定している米国人からは「最低でも50本ほどの在庫が欲しい」と言われたとのこと。お国柄によって異なる意見も、グローバル展開を志すスタートアップには参考になる。また、「自動運転のクルマの中でくつろぐためのアイティムとして最適では」というアイデアも寄せられたとのことで、異業種が集まる展示会ならでは話が聞けたことが収穫となったようだ。

 同じく、グローバルかつ多彩な業種の企業を集めるCESへの出展のメリットを実感していたのは、Idein株式会社(東京都千代田区)の代表取締役である中村晃一氏だ。同社は、顔や物体を識別する処理をエッジコンピューティングで行うためのプラットフォーム「Actcast」などを展示、紹介した。今回ここに集まったスタートアップの多くは、消費者向けの商品やサービスを紹介しており、一見して商品の特徴がつかめるロボットなどに比べると、同社の取り扱う商品は異色と言える。

写真中央 説明中のIdein株式会社の中村氏

写真中央 説明中のIdein株式会社の中村氏

 そんな同社においても出展のメリットはある。CESに出展している企業の中には同社の顧客となり得る自動運転やスマートシティ関連の企業が多数あり、こうした出展企業の関係者は、自分たちの必要とする商品や能力を持ったパートナー企業を会場内で物色している。また、CESのような世界レベルでも大規模の展示会には米国の企業ばかりではなく欧州、イスラエルなどの企業関係者も参加している。実際に期間中、そうした国々の企業からもさまざまな打診があったという。

 今回の出展を通しての感想を中村氏に聞いたところ「(自分たちの技術を必要とであろう)先進的な取り組みについては、現在はまだPoC(Proof of Concept=概念検証)の段階にあるところが多い。このあと実際に商品化するにあたってはコストが問題になる。実験なら高価な仕組みも使えるが、大量に生産する段階になるとコスト効率が問題になるので、そのときにどこのモノ(製品)を採用するのか。(そうした選定の候補になるためには)自分たちがどんなものを作っているのか広く知ってもらう必要があるなと思いました。知っていれば選ばれる可能性は十分にあるなと思います」とのことだった。

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来場者で賑わうJ-Startupの展示エリア

来場者で賑わうJ-Startupの展示エリア

 ベンチャー支援の各種プログラムでは、グローバルマーケットへのアクセスについても、さまざまな方法で支援を行なっている。支援を受ける側としては、事業立ち上げ、拡張期で多忙な中、人員と時間を費やし海外のショーに出展して、どんな成果が得られるのか疑問に思う向きもあるだろう。ネット普及によって世界は狭くなり、国をまたいだコミュニケーションは容易になった。しかし、お互い予期しない出会いが将来のビジネスにつながり、全く畑違いの人との会話が新しいアイディアを生むこともある。また、自分で見て回ることで、グローバルマーケットの中での自社の立ち位置がより正確に理解でき、次に自分たちは、何に備える必要があるのかについてもより具体的で説得力のある説明が周囲にできようになる。

 出展社の中には、自分たちのサービスが世界中を見渡してもユニークであることを改めて認識したという意見もあった。今回出展した日本のスタートアップ多くは、新たな可能性に気づきなんらかの手応えを感じたようだ。

Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。