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遺言書作成をAIがお手伝い~ブロックチェーンにデジタル遺言を保存するHusime.com

 「相続で揉めた」という話を、身の回りで聞いたことはないだろうか。相続で揉める原因のひとつは、故人の遺言書が残されていないことだ。日本では、親の9割は遺言書を残さずに亡くなっているというデータもある(ひまわり司書法人調べ)。

 親族同士の争いを防ぐため親に遺言書を書いて欲しいと考える人は多いはずだが、なかなか本人には言いづらいものだ。また頼んだとしても、取り合ってもらえないことも少なくないだろう。さらに実際に法的に有効な遺言書を書こうとすると、たいへんな労力と手間、コストがかかることに気づく。エンディングノートなども売られているようだが、実際書き出してもなかなか進まず、挫折することも多いと聞く。

Husime.com事業担当小嶺和子氏(AOSデータ提供)
Husime.com事業担当小嶺和子氏(AOSデータ提供)

 そんな中、スマートフォンを使ってデジタル遺言を作成できるアプリ「Husime.com」(フシメ・ドットコム)が発表された。AOSグループのリーガルテック株式会社が開発し、AOSデータ株式会社からリリースされる。リーガルテック社はリーガル業界を支援する各種のソリューションを開発してきた会社であり、AOSデータはデータ復元ソフト「ファイナルデータ」やデータ抹消ソフト、クラウドバックアップサービスなど、データの安全な管理や抹消に関する製品で知られている。Husime.comについて、リーガルテック社 Husime.com事業担当の小嶺和子氏と、AOSデータ社CTO志田大輔氏にお話を伺った。

簡単な入力とAIのサポートで遺言作り

 小嶺氏によると、メインのターゲットユーザーをシニア世代と想定し、できるだけ簡単に操作できるようUI/UXを工夫したという。いざ遺言を書くと思うと身構えてしまうので、Husime.comでは入力画面のガイドに従って、画面のタップ、あるいは音声入力していくだけで、ほとんどの入力作業がおこなえるようになっている。実際に操作画面を見たが、基本的に質問に「はい」「いいえ」で答えていけばよい。最短15分ぐらいで入力が終わり、AIが遺言書のスタイルにリライトしてくれる。出来上がったデジタル遺言は、ブロックチェーン上に保存されるので、他者が改ざんすることはできない。

Husime.com入力画面例(AOSデータ提供)
Husime.com入力画面例(AOSデータ提供)

 小嶺氏の説明によると、現在デジタル遺言は法的には有効ではない。そこでHusime.comでは、デジタルでの保存と法的な効力を持つ紙の遺言書作成との連携を図っている。「遺言を書くというのは本当に大変なことでなかなか踏み出せない人が多く、その最初のハードルを乗り越えるためのきっかけとして使っていただきたいのです」(小嶺氏)

 高齢者にとっては手書きであっても、文章を書くこと自体が大きな負担になる。音声入力などを使ってHusime.comでデジタル遺言をまず作ってもらい、それを元に自筆で書き写し、法的効力を持たせるように整えることも考えられると小嶺氏は話す。デジタル遺言を作ってみたことがきっかけで、法的に有効な遺言も作成したいと考えたユーザーのために、同アプリの「行政・専門家などに相談」というメニューには、地域ごとの公証役場や法務局、また弁護士や司法書士・行政書士など情報が掲載され、専門的なアドバイスを得る際にアクセスしやすいようになっている。

 万一、当人が亡くなってしまったら、IDとパスワードで保護されているデジタル遺言を遺族が見る事ができるのだろうか。こうした場合には、事前に登録した人に向けてデジタル遺言が送信される設定になっている。送信されてきたものには法的な効力はないが、そこから故人の遺志や相続上の重要情報を入手することができるかもしれない。それが相続作業の助けとなることだろう。

セカンドライフのポータルサイトに

 デジタル遺言を書くこともそうだが、自分の人生を棚卸しするために、「自分史」を作成したい人もいるだろう。Husime.comには、同様に画面タップや、音声入力で「自分史」を作成する「ライフストーリー」という機能がある。やはりブロックチェーン上に残されるので、改ざんや毀損、紛失などのおそれはないという。

 今後はHusime.comを、デジタル遺言や自分史作成の他、遺言や終活などに関するニュースを集めたポータルサイトに育てていきたいという。「シニア世代の終活に関する情報収集を支援したいのです」(小嶺氏)

 同社は、デジタルの遺品復旧・整理サービスも提供している。「AOSデータ社は、約20年間にわたりデータ復旧事業を行ってきた実績があります」(志田氏)

 この先、亡くなった方の遺品には、必ずといっていいほどデジタル機器が含まれるだろう。その中には、故人の重要な情報や思い出が残されている。今後、「デジタル遺品市場」は大きくなるだろう。Husime.comと合わせて展開し、シニア市場でのシナジー効果を生み出すのがねらいだ。

 生きているうちに、死後の準備を完璧に整えておくというのは誰にでも難しい。だが、自らの人生の棚卸しを行い、必要事項を整理しておき、死後遺族や関係者に迷惑を与えないようにすることは大事な責務だろう。そのきっかけ作りとして、このようなアプリが役立つかもしれない。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。