Open Innovation Platform
FOLLOW US

オンライン開催となったOpen Network Lab第20期のピッチ 屋外広告、副業支援、ペット保険など6チーム

オンライン開催となった「Onlab 20th Batch Online Demo Day」

オンライン開催となった「Onlab 20th Batch Online Demo Day」

 株式会社デジタルガレージが主催するシードアクセラレーターブログラムOpen Network Lab(以下「Onlab」)。2020年4月21日、その20期生による「Onlab 20th Batch Online Demo Day」が開催された。今回は新型コロナウイルス対策のため、Onlab10年の歴史で初のオンラインイベントになった。3ヶ月間のプログラムを終え、6チームがピッチを行った。

屋外広告をWeb広告と同じように運用できるプラットフォーム

「PalledAd」(パルダッド)を展開する株式会社PalledAd CEO 安彦(あびこ)賢氏
「PalledAd」(パルダッド)を展開する株式会社PalledAd CEO 安彦(あびこ)賢氏

 トップバッターは、屋外広告の自社運用を可能にする「PalledAd」(パルダッド)を展開する株式会社PalledAd CEO 安彦(あびこ)賢氏が登壇した。「屋外広告は有効に活用されていない」と安彦氏。Web広告の場合、投資金額によって、どれほどリーチ数が見込めるかシミュレーション可能だが、屋外広告の場合、広告効果の可視化への取り組みがなされていなかったことにより、計画が立てにくい。さらに、媒体を配信する窓口が、ビルオーナーや飲食店・小売店店舗などバラバラだ。よってどこにどう頼んでいいのかわかりにくい。

 そこでパルダッドでは独自の「媒体評価システム」でWeb広告と同じように広告を配信できるようにするプラットフォームを開発した。媒体評価システムとは、「人流データ解析による通行量分析」と「アイトラッキングによる視認率モデル」を掛け合わせた独自のモデルだ。これによってWeb広告と同じ感覚で、屋外広告のキャンペーン計画を可能にすると続言う。

 安彦氏は、「国内の屋外広告市場は3000億円と推計されるが、パルダッドが広告効果を可視化していくことで2025年には5000億円市場へと拡大させたい」と話す。将来はパルダッドの媒体評価システムを用いて、飲食店・小売店店舗の壁広告など屋外広告の概念を拡げたいと結んだ。

“ストクる”という新しい検索方法を生かすSNS

「SignPlace」を展開するサインプレイス株式会社三浦玄氏
「SignPlace」を展開するサインプレイス株式会社三浦玄氏

 次にピッチを行ったのは街のお気に入りスポットの蓄積・共有SNS「SignPlace」を展開するサインプレイス株式会社三浦玄氏が登壇。三浦氏によると、最近の若者は「#ハッシュタグ検索」で店や施設を探すことが多いが、その利用が進むにつれて無関係なハッシュタグが増えすぎ、「ハッシュタグ汚染」と呼ばれる現象が起きて、ユーザーが不便を感じているという。

 そこで今、若者の間では“ストクる”という新しい検索方法が進んでいる。自分だけのお気に入りを溜め込んでいくのだが、自分個人だけにとどめおきたいものと、友だちと共有したいものに別れると三浦氏は言う。これにより、10代を中心にInstagramとGoogleマップによる飲食店検索率が伸びているのだそうだ。しかし、それらのサービスはそもそも“ストクる”ためのサービスではない。「友だちと一緒に楽しむ“ストクる”サービスがない」というのが三浦氏の見立てだ。「それを可能にするのがSignPlaceです」と話す。

『同じ価値観を持つつながりを作る』『1つのアプリに情報が集約されている』『お気に入りの場所のデータベースを作れる』ことだと特徴を挙げ、「ハッシュタグ汚染の影響を受けにくい」という特長を持つ。三浦氏は、位置情報をキーとしたジオターゲティング広告の市場は2024年、2586億円に拡大すると予測し、ジオターゲット広告の次にはAR市場にも拡大していきたいと語った。

危機にある宿泊業界に効率化ソリューションを提供

「aiPass」(アイパス)を展開するクイッキン株式会社のCOO山田真由美氏
「aiPass」(アイパス)を展開するクイッキン株式会社のCOO山田真由美氏

 3番目の登場は宿泊施設のオペレーション効率化の「aiPass」(アイパス)を展開するクイッキン株式会社のCOO山田真由美氏が登壇。現在、新型コロナウイルスにより大打撃をこうむっている宿泊業界に、今までのやり方を見直すときだと提案したいと話した。宿泊施設には多くのベンダーやシステムが混在しており、またアナログなオペレーションも多く『非効率な運営』という課題が横たわっている。

「aiPass」は、最大のアナログ業務「チェックイン」からソリューションを提供していく。いまだにチェックインは紙を用いることが多く、同社の調べでは業務時間の70%もがチェックインに割かれている。自動チェックイン機もあるが、実際に高価で導入も進まない上、実際に調査してみたところ使い勝手もよいとは言えない。そこで、この課題を解決するために、旅行者のスマホをチェックインに使う「aiPass」を考案した。

 宿泊施設側に新たな設備は不要だ。紙の帳票に比べ、運用ステップを3分の1にでき、システムを一元化することで効率化が図れる。「aiPass」には決済、スマートキーなど各社のニーズに合わせたプラグイン機能も追加可能だ。当初は宿泊施設との共同開発により、年間106億円の売上を見込み、その先にはSaaSとして年間320億円の売上を見込んでいるという。

副業制度の構築という大企業初めての経験を支援

「フクスケ」を展開する株式会社フクスケ代表取締役小林大介氏
「フクスケ」を展開する株式会社フクスケ代表取締役小林大介氏

 4番目のチームは大企業の副業制度構築サービス「フクスケ」を展開する株式会社フクスケ代表取締役小林大介氏が登壇。現在、副業者が急増している。「近い将来社員の半数以上が副業を持つ可能性が高いでしょう」(小林氏)。ただし、それによって「従業員の隠れ過重労働」「副業を踏み台にした反社の侵入」「情報漏えい」といったリスクが生じ始めている。これを未然に防ぎ、会社を守るには、整備された副業制度が不可欠と小林氏は続けた。

 しかし、この副業制度の構築がむずかしい。『制度設計』『制度運用』『事故対応』のそれぞれに障壁があり、人事のみでの設計、運用は困難だ。その課題を解決するのが同社提供の副業制度構築クラウドサービスの「フクスケ」だ。弁護士。社労士が監修した独自フレームを用意。フォーマットに入力していけば制度設計ができる。また、入力情報に基づいて、会社・従業員双方についてのリスク判定を行うことができる。さらに、フクスケのリスク判定を受けたホワイト副業には独自保険を提供し、事故には補償も可能となる。まずは大企業向けのパッケージを準備し、その後は中小企業に展開していくという。

飼い主の利便性とペット保険会社の業務効率化を両立

「ANIPOS」を展開するアニポス社代表取締役大川拓洋氏
「ANIPOS」を展開するアニポス社代表取締役大川拓洋氏

 5番目は飼い主のペット保険の利便性向上とペット保険会社の業務効率化を実現する「ANIPOS」を展開するアニポス社代表取締役大川拓洋氏が登壇。「ペット保険市場は年率20%で拡大している成長市場です」(大川氏)。ところがペット保険の未申請件数は100万件に上る。その理由は、飼い主が「(ペット保険に入っていることを)忘れる」「(申請が)むずかしい」「面倒」ということだ。一方、保険会社も業務設計がアナログで、ユーザーの利便性向上と自らのコスト削減を両立できていない。この、飼い主の利便性向上と、保険会社の保険金支払いの業務コスト削減を同時に実現する。

 アニポスは、飼い主が動物病院でもらった明細書をスマホで撮影するだけで保険金精算が完了する飼い主向けスマートフォンのサービス、そして保険金精算に必要な業務を自動で代行するペット保険会社用サービスの2つがある。とくにペット保険に特化したAI-OCRが強みで、これまでのペット保険会社のアナログ業務を省力化しつつ多くのデータを取得することが可能だと言う。大川氏は「年間500万件のペット医療データを取得し、将来的には保険商品の設計、受診リコメンド、マーケティングに生かしていきたいと結んだ。

北米での日本酒ECプラットフォーム展開

「tippsy」を展開するティプシー社CEO伊藤元気氏
「tippsy」を展開するティプシー社CEO伊藤元気氏

 最後の6チーム目、米国に拠点を構える日本酒ECプラットフォーム「tippsy」を展開するティプシー社CEO伊藤元気氏が登壇。近年米国では、日本酒はワインに近い飲み物として認知されてきており、ワインカテゴリーでは一番の成長ジャンルとのことだ。しかし、これだけ認知されてきながら、800人にアンケートしたところ、レストランで日本酒を飲んだことがあっても、店で買ったことがない人がほとんど。その原因を調べると、禁酒法時代に生まれたアルコール免許のせいで、ムダなレイヤーがたくさん存在するなど、サプライチェーン自体に問題があることがわかったとのことだ。

 そこで伊藤氏は、1年前まず日本酒のEコマース「tippsy」をローンチした。それにより米国全土に日本酒の情報を届けることを可能にするとともに、ブランドストーリーや味の違いなどをユーザーに丁寧に届けることができるようになったと言う。「選び方がわからないと言う消費者には、ミニボトルのサブスクリプションサービスを提供しています。日本の蔵元さんからも、サブスクリプションに入れてくれと言われます」(伊藤氏)同社はローンチから月売上が5倍に成長した。伊藤氏は今後5年で、米国の日本酒市場はシャンパンと同規模の1500億円に成長すると見ており、そのうちの700億円の小売りポテンシャルを見込む。まずは顕在需要を取り込んで10億円規模のリテーラーに一気に成長し、囲い込んだ顧客データを元に、北米向けブランドをスタートさせ、5年後には150億円の売上に成長する計画だ。

* * *

 以上が10周年を迎えたOnlab第20期6チームのピッチ内容だ。なお、第21期への応募受付も開始されており、申込締切りは、5月29日正午までとなっている。

Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。