Open Innovation Platform
FOLLOW US

大企業は「怖い」印象?まずは”GIVE“から〜バイオアクセラレータープログラム「Onlab Bio」が始動

「Open Network Lab BioHealth」会場の様子

「Open Network Lab BioHealth」会場の様子

 バイオテクノロジーの領域においても、デジタル技術の進化が旧来のエコシステムに大きな変革を迫っている。私たちの健康な生活を支えるために、医療現場や医師や病院、製薬会社といった枠組みを越え、新しい技術への取り組み。それに必要なパートナーシップの構築が進められている。

 そうした中で、株式会社デジタルガレージは、この5月にバイオヘルスケア領域のスタートアップ(新規企業)育成とオープンイノベーション推進を目的としたアクセラレーター(事業成長支援)ブログラム「Open Network Lab BioHealth」(以下「Onlab Bio」)を始動、参加チームの募集を開始した。

 「日本では、ヘルステック系のスタートアップを支援する環境が整っていないのが現状です。よって、研究開発/事業開発および投資機能も持った弊社のような組織こそが、エコシステム構築の旗振りをしていくことが重要だと考えました」(デジタルガレージ 「Onlab Bio」橋本遥)

 同社の呼びかけに対し、製薬会社をはじめとした多様な企業がパートナー企業参加を表明した。パートナー企業からは、社員がスタートアップの活動をサポートするためにメンターとして参加し、課題に応じて社内他部門のメンバーもメンターとして紹介する役目も果たす。

* * *

 2018年6月19日、東京・六本木アカデミーヒルズで「Onlab Bio」のパートナー企業が一同に集結するミーティングが開催された。デジタルガレージ代表取締役林郁(はやし・かおる)の挨拶に続いて、伊藤穣一(取締役 デジタルガレージ共同創業者、MITメディアラボ所長)が登壇した。

 自身がインターネットの黎明期に深く関わった経験から「バイオはインターネットに似ている要素がたくさんあるが、大きな違いは、ベンチャーを立ち上げたとしても、そこからのステップアップに大きなリスクが伴うことです」と課題を指摘し、大企業とベンチャーがうまく組んでやっていく必要があると期待感をにじませた。

支援を受ける側から見た大企業は「怖い」存在

 続いて国立研究開発法人 科学技術振興機構 元島勇太氏が登壇し、『大学発ベンチャー支援の現場から』というテーマで、バイオベンチャー支援の現場における課題を述べた。個人的見解と前置きされたが、リアルな支援現場の課題が述べられ、熱心にメモをとる参加者の姿も見られた。

国立研究開発法人 科学技術振興機構 元島勇太氏

国立研究開発法人 科学技術振興機構 元島勇太氏

 元島氏によると、支援を受ける側には次のような課題があるという。

 「大学の研究機関側からは、“まだ大企業に持って行くのは早い”とよく聞きます。それを決めるのは大企業の方なので、一回行ってきてくださいとこっちは思うのですが。単純にいうとみなさん(会場に向けて)は怖がられているんですね(笑)」(元島氏)

 さらに、「これは私からの個人的なお願いになってしまうのですが」と前置きし、会場の大企業に向けてベンチャーとの協業ポイントについて、「まず”GIVE“から。大企業にとってはちょっとしたことも、ベンチャーにとっては生死を分かつラインになります。たとえば、一週間検討させてくだい、と大企業が対応すると倒れてしまうベンチャーはざらにいます。また、信頼関係の構築が非常に重要です。ベンチャーは村社会。横のつながりなので、いい評価も悪い評価もSNSで一瞬にして広がります。そこは意識していただきたいのです」と具体的な留意点を語った。

 元島氏は最後に、「ベンチャーに下手に出てほしいということではなくて、もともとの目的を思い出していただきたいのです。大企業には大企業にしかできないことがあり、そのロジックではできないことをやってもらうために、ベンチャーと協業すると思うんですね。大企業のロジックに巻き込んでしまうと、皆様方が自分でやった方がよくなって協業する意味がなくなってしまいます。できるだけ、ベンチャーのやり方を尊重する体制を構築してほしいと思います。そうすると収益がなかなかしんどいよね、という話になると思いますが、イノベーションの近くにいれば、経済成長によって恩恵にあずかれる、それくらいの寛容さでいてくださるとありがたいです」と講演を締めくくった。

将来の医療環境をがらりと変えるような課題・提案に出会いたい

武田薬品工業 月見泰博氏(右)と戎野幸彦氏

武田薬品工業 月見泰博氏(右)と戎野幸彦氏

 ミーティングの後半は参加企業の交流の場となった。参加した企業はどう受け止めたのか? その場で参加パートナー企業にお話を聞いた。そのうちのいくつかのコメントを紹介したい(順不同)。

 「このような機会を通じて、多くの自由な発想に触れるとともに、将来の医療環境をがらりと変えるような課題・提案に出会えることを期待しています。やはりこういうところに集まってこられる方々は、みなさん、志が高いというか、すごいエネルギーを感じました。普段私たちが研究所、あるいは海外の人と交わっているものとは全然違う、言葉に表せないようなエネルギーですかね。そういうものを感じまして、私自身がすごくワクワクしている感覚です」(武田薬品工業 月見泰博氏)

帝人ファーマ 玉井建嘉氏

帝人ファーマ 玉井建嘉氏

 「初めてこういうアクセラレータープログラムの場に参加したのですが、他の企業様と一緒に何か新しいことを、ビジネスの観点を含めて作り上げていくことに興味を覚えております。スマホ、アプリ、ウェアラブル等を活用し、ヘルスケア領域における未充足ニーズを解決するサービス・商品を期待しています」(帝人ファーマ 玉井建嘉氏)

 

ニチレイ 内田絵理子氏(左)小泉雄史氏(右)

ニチレイ 内田絵理子氏(左)小泉雄史氏(右)

「バイオやヘルスケアが新しい次の世界に移っていく。そこにチャンスを見つけて新しい挑戦をするんだなというのが伝わってきました。食品と健康というと、“機能性”という話でずっと来ていましたが、そういうものではない新しい世界観のものが必要だと思っています。そうした切り口がこの取り組みで出てくることを期待しています。食品、農業、水産業なども、これまでの部分最適対応ではなく、統合的なアプローチをすることで新たなイノベーションが起きると考えています」(ニチレイ 小泉雄史氏)

 

ティップネス 尾崎優氏

ティップネス 尾崎優氏

「すごくおもしろいことが起こりそうだなと思いました。どちらかというと、私たちの企業はほかの参加企業様とちょっと色が違うかなと思っていますので、逆に新しいサービスというか、モノを生み出せたらなと思いました。いろいろな方々といろいろなモノを作れたらなと思っています。コンディショニングを軸とした、様々な新しいアイデアをお持ちの方々と出会えることを楽しみにしております」(ティップネス 尾崎優氏)

「Onlab Bio」には医療関係のみならず、多様な企業が参加していることがわかるだろう。この取り組みが、バイオ・ヘルスケア分野の新しいエコシステム構築を推進する人材、企業の交流の場となることを期待したい。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。